試合中、プロゴルファーが唯一頼れる存在、それがツアーキャディ。バッグを担いでコースを歩き、芝目や風を読んだり、ボールを拭いたり。選手がスムーズにプレーできるようサポートする、重要な仕事をこなす彼らに注目! 今回はPGAツアーを目指す出口慎一郎さんに話を聞いてみました。
資格は不要。でもどうやってなるの?伊能恵子さんに聞いてみた【プロゴルファーを裏で支えるツアーキャディのお仕事】
◆「夢はPGAツアー。世界で戦うプロと共に最高峰の舞台に立ちたい」
ツアーキャディの醍醐味は、トッププロが死ぬ気で勝負に臨む姿を、誰よりも近い場所で観られること。これに尽きます。それに、アメリカPGAツアーに立つことだって、夢じゃない。僕の横をタイガーやマキロイがウロウロしている日が来たって、おかしくないわけです。大学卒業後の就職先が剣道推薦で警備会社か警察か。剣道一筋でこの2択しかなかった自分が言うのもなんですけど(苦笑)。
◆化粧品会社のトップセールスマンから異業種のキャディの道へ
会社員時代は寝る間を惜しんで、働いて遊んで…。営業成績は常にナンバーワン、年収も3年目で約600万円と安定。でも毎日疲れ果てていました。それで、一度立ち止まろうと思い、辞表を提出。ゴルフショップに転職したのは、通える範囲の求人がそれしか見つからなかったから(笑)。
転機となる出会いは、仕事をコースに絞り、キャディマスターを務めるようになったころ。自分が勤めるコースで「北九州オープン」が開催され、トッププロたちが来場。当時、宮里優作さんのキャディを務めていた杉澤伸章さん(※ゴルフネットワークのリポーターとしてもおなじみ)と、ひょんなことからお話しする機会を得て。自ら「ツアーキャディに興味があるんです!」と売り込みました。
最初は有休を使い、貯金を切り崩しながらも、とにかくトーナメントにくっついて行って。コースでも移動中の車内でも質問攻め(笑)。でも杉澤さんは、惜しみなくいろんなことを教えてくださいましたね。半年後には、この道で生きると決めました。
これまでに、女子も男子もたくさんの選手を担がせてもらいました。どの選手と組んでも、その度に得るものがあり、引き出しは少しずつですが確実に増えてきたかな、と。
でも最初にお話ししたように、夢はまだまだこれからです!
<これまで担いだプロ>比嘉真美子 北村晃一 アン ソンジュ 片山晋呉 小鯛竜也 星野陸也etc.
◆出口さんのツアーキャディHISTORY
幼稚園から大学まで…青春のすべてを剣道に捧げる。剣道は四段の腕前で全国大会にも出場。とはいえ、大学卒業を控え、このまま敷かれたレールの上を歩むことに、ふと疑問を感じる。
22歳…化粧品会社に就職。たまたま訪れたゴルフ練習場で出会った社長に、「うちに来ないか」と誘われ、飛び込む。
26歳…ゴルフショップの店員に。一気に給料が減り、平日夜の22時から2時間、打ちっぱなしの球拾いのアルバイトも。
27歳…ゴルフコースのバイトと掛け持ちを始める。高い日給に惹かれ始めるも、先が見えず「人生でいちばん不安だった時期」。
28歳…プロテストの準備でコースを訪れていた比嘉真美子に出会う。当時彼女はアマだったが、“プロゴルファー”というものを初めて間近に見て、刺激を受ける。
29歳直前…ツアーキャディになると決意。競技委員や大会運営の仕事を通して芽生えていた、「トーナメントに関わりたい」という気持ちが杉澤伸章氏との出会いで確信に変わる。
〜32歳…女子ツアーを中心に数々のプロとタッグを組む。選手によりツアーキャディに求めることは異なると知り、3年間かけて対応力を鍛える。
33歳…片山晋呉の専属キャディとして念願の初優勝。常に準備をしておくことの大切さを学ぶ。「僕のツアーキャディとしての学びの多くは、晋呉さんから得たもの」。
34〜36歳…星野陸也の専属キャディに。「絶対に獲りに行こう!」とふたりで固く誓って臨んだ「フジサンケイクラシック」で優勝。コースレコードも更新。
現在…今シーズンはチャン・キムほか石川遼も担ぐ予定。340ヤード超えのビッグドライブを武器に戦うチャン・キム。当然、ふたりが目指すのはアメリカツアー。
◆教えてくれたのは…
出口慎一郎さん…長崎県出身。DELiGHT WORKS 所属。30歳でツアーキャディの道へ。スポーツメンタルトレーナーの資格を持つ他、日本アマチュアeスポーツアンバサダーも務める。子供向けイベントなども主催。
撮影/兼下昌典、Getty Images エディター/一寸木芳枝