女子ツアー注目の一戦、「樋口久子 三菱電機レディス」(10月30日~11月1日、埼玉県・武蔵丘ゴルフコース)の開幕が、いよいよ近づいてきました。ディフェンディングチャンピオンの鈴木愛プロは、昨年のこの大会での優勝をきっかけに大逆転で2年ぶりに賞金女王の座に返り咲いています。樋口久子大会名誉会長がその鈴木プロをお招きし、昨年大会のハイライトや今年のみどころを語り合っていただきました。
2019年大会を振り返って
――これは昨年の大会で鈴木さんがウイニングパットを決めた瞬間の写真です。
樋口 よく覚えていますよ。大きなオーロラビジョンの前で天を仰いでいる姿が印象的ね。
鈴木 ファーストパットを合わせにいったつもりが思った以上にいっちゃって。1mくらいオーバーでしたね。外せば申ジエさんとのプレーオフだったんですけど、そうなったら負けるなと思って手が震えていました。
樋口 このオーロラビジョンはスコアだけでなくプレーの映像も出るんです。愛ちゃんのパットの転がりも鮮明に映っていましたよ。オーバーしたときは私も思わず「あっ」と言葉が出ちゃった。
鈴木 本当に大きくてきれいな映像のオーロラビジョンですよね。その前でウイニングパットを決められてよかったです。
樋口 最終日は申ジエさんと同じ組だったでしょう。彼女は実力者だし、賞金女王を争っている相手だったからより集中していいプレーができたんじゃないかなと思います。
鈴木 そうなんです。申さんと一緒でよかったと思います。
樋口 16番のパー5で3打目をピッタリ寄せた申さんに対して、愛ちゃんが長いバーディパットを決めたでしょう。あれが大きかったと思いますよ。3~4mでしたか?
鈴木 4mくらいでした。前の15番で私がボギーをたたいて申さんがバーディ。1打差に迫られていた直後で、流れが申さんに向きかけていましたから「ここが勝負どころだ」と思っていました。
樋口 この優勝をきっかけに3連勝して逆転で2年ぶりの賞金女王になったわけだけど、普通はあれだけ差をつけられているとあきらめてしまいますよ。
――大会前で賞金ランキング1位の申ジエさんと約3800万円差の4位でした。本大会を含めてツアーは残り5試合だったのですが、その時点からこれだけの差を逆転した例は過去ありませんでした。
鈴木 へ~え、そうだったんですね。
樋口 すごいことですよね。よく頑張ったと思います。
鈴木 ありがとうございます(笑) 賞金女王はあきらめてはいませんでしたけど、優勝からも試合からも遠ざかっていましたから、試合勘や体力的な部分で不安はありました。それに優勝というのはいいスコアを出すのとは意味合いが違って、運とか流れがすごく大事。三菱電機レディスで勝てたことで流れが来たから、続く2試合も勝てたと思いますし、この大会での優勝がなかったら絶対に賞金女王にはなれていなかった。本当に大きな1勝だったと思っています。
心身の休養が優勝に、逆転賞金女王につながった
樋口 あの優勝の前にしばらくお休みした期間がありましたよね。
鈴木 はい。1カ月くらいお休みをいただいて、三菱電機レディスが復帰2試合目でした。
樋口 手首の故障?
鈴木 もちろんケガも理由のひとつですが、それ以上に気持ちの部分が大きかったです。ゴルフをするのが苦しい、やりたくないという……。スポンサーさんをはじめサポートしてくださっているみなさんに迷惑をかけて本当に心苦しかったのですが、思い切って休ませていただきました。その間、いろんな方に相談させてもらうなどしてだんだん気持ちが楽になり、復帰して頑張ることが応援してくださっているみなさんへの恩返しになるんだ、と思えるようになりました。それが大きかったです。
樋口 私も現役時代は調子が悪いと人前でゴルフをするのが嫌でしたよ。それでも試合に出ないわけにはいかない。そんなときは「頑張って優勝しよう」という気持ちになれないんですよ。ですから、愛ちゃんはよく思い切って休んだと思います。それが結果にもつながりましたしね。お休みしている間はどんな生活をしていたの?
鈴木 掃除や洗濯、料理など家事をやっていました。それまで自宅にあまりいることがなく、家事自体する機会がほとんどなかったので、すごく新鮮で楽しかったです。
樋口 そういう生活にどっぷりつかっても困りますけどね(笑)
鈴木 はい(笑)
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