佐伯三貴のオピニオン【女性アスリートの生理コントロールについて】

みなさんこんにちは。佐伯三貴です。朝晩は冷え込むようになりましたが、いかがお過ごしですか?冷えると体に色々な影響が出やすいので、どうぞお気を付けください。

今日は女性の体にまつわる話をしたいと思います。最近では、男性の方もだいぶ理解しようとして下さるようになりましたが、女性の体はとてもデリケートです。生物として子孫を残すために必要な体の仕組みによって、思春期を過ぎたころから、一定周期で生理、排卵、生理前の不調(月経前症候群=PMS)などが起こります。

仕事を休んだり寝込んでしまうほど生理痛が重い人もいれば、ほとんどいつもと変わらない人もいるほど、個人差はあります。ただ、生理による体の変調は、表面的には軽い人でも、体の中では様々なことが起こっているのは間違いありません。体重の変化が起こることもわかっています。

日頃から心身を鍛えているアスリートでも、女性特有の周期での体の変化自体は避けられません。けれども、ベストパフォーマンスを発揮するために、低用量ピルを使用することで、コントロールすることはできるようになってきています。

この分野に関して、日本はかなり遅れています。ピルを『避妊薬』としてだけ考えている人も多く、その服用に対しての抵抗や誤解もあります。一定の年齢以上の方の中には、生理の話を公にすることすら抵抗のある方がいるようです。けれども、生物として当たり前に起こる体の現象なのですから、女性だけでなく男性も含めてきちんと知っておかなくてはいけません。そんな風潮がようやく広まりつつあるようです。

イメージ画像/Adobe Stock

◆毎週開催される女子プロゴルフの世界では…

オリンピックに出場する選手などは、4年に1度の大舞台に備えて、生理の周期をコントロールしています。遅ればせながらではありますが、日本のオリンピアンたちの間でもこれは常識になりつつあります。ゴルフの世界は、さらに遅れていましたが、最近ではいいパフォーマンスを発揮するために、このコントロールをする選手がかなり増えてきています。

プロゴルフの世界では、シーズン中は毎週のように、試合が開催されています。人気がある日本の女子ツアーは、3月初めから11月終わりまでの9か月間、毎週“本番”があります。つまり毎月、PMSや生理の周期にかかる試合があるということです。ピルを服用することで生理の時期を移動させるにしても、毎週試合がある中でどうやって調整していくのか。薬が合うか合わないか、副作用はどうか、なども含めて、専門家である医師と相談しながらきちんと考えていく必要があります。

母校、東北福祉大ゴルフ部の女子をコーチしている私は、部員たちに体のケアやコントロールについても指導しています。生理痛をやわらげたり、生理周期のコントロールを考えるために、婦人科にかかることも勧めています。今でも婦人科に対して「妊娠したら行くところ」「子供を産むためのところ」という意識を持っている人も少なくないようですが、そんなことはないし、恥ずかしいことなど全くありません。女性が自分自身の体としっかりと向き合い、病気を早期に発見するためにも、若いころからかかりつけの婦人科医を持つほうがいいのです。

最初は受診にためらいがあるようなら、女性としての先輩であるお母さんと一緒に行くのもいいでしょう。アスリートとして、女性として、婦人科に通うことがもっともっと当たり前になるといいな、と考えています。

大学生と変わらない年齢の若い女性がどんどん増えている女子ツアーでも、選手ミーティングでそういった分野の先生を呼んで講演をしてもらう機会も増えてきました。このような機会がもっと増えていってほしいですね。

女性が自分の体について知ること、そのコントロールを考えること。また、女性だけでなく男性もきちんと知ること。そんな当たり前のことが、当たり前に広がる世の中になってほしいと思います。

デリケートなテーマですが、体のコンディションは、メンタルにも大きな影響を与えます。アスリートとしてベストパフォーマンスを発揮するために、それ以前に一人の女性として自分を大切にするために、もっともっと考え、行動して欲しい。そのことを皆さんにも知って頂きたいと思ってお話ししました。

取材・文/小川淳子 写真/Getty Images

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