古閑美保コラム「賞金女王の価値」

こんにちは、古閑美保です。私のゴルフに対する考えやゴルフ界に言いたいこと、女性ゴルファー向けの話しなど、歯に衣着せず、感じたことをお伝えしていきたいと思います。シーズン終盤になり、注目を集める賞金女王争い。賞金女王についてお話しします。

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世紀の大どんでん返しでつかんだ賞金女王

稲見プロ(左)と古江プロ(右)

国内女子ツアーは残すところあと3試合です。稲見萌寧と小祝さくらの2人の争いかと思われた賞金女王争いですが、10月以降3勝を挙げている古江(彩佳)が小祝を抜き、さらに稲見との差を約400万円と縮め、熾烈な争いになってきました。実力者同士の争いは、最後まで目が離せそうにないですね。

賞金女王といえば、2008年に私も獲得したタイトルです。もともとはあまり意識していなかったのですが、実際にそのタイトルを取ると1位と2位では全然違うと感じました。人それぞれの価値観の違いはあると思いますが、なんでも1番になるのはいいことです。私は全試合で勝ちたいと思っていたので、それぞれの試合で1番になることを目指していましたし、年間を通じての1番というのは、なんといっても箔がつきます。引退してからも、さまざまな場面でそのタイトルの大きさを感じています。

当時のことを思い出すと本当に奇跡でした。夏ごろまでに2勝していて、賞金ランキング1位、2位の位置にいました。しかし、李知姫が日本女子オープンで優勝するなど、秋以降、差をつけられていて、残り3戦となった伊藤園レディスで優勝してギリギリ残っていた感じです。賞金ランキング3位で最終戦を迎えましたが、1位の知姫との差は約2200万円。最終戦は優勝賞金が2500万円だったので、逆転女王の条件は私が優勝して、李知姫が9位以下。その可能性はめちゃくちゃ低いと思っていました。

最終戦は3日目を終えて3打差の6位タイ。最終日は伸ばすしかない状況で「68」を出して通算6アンダーと、ホールアウトした時点で2位でした。首位を走っていた全美貞が17番ボギー、18番ダブルボギーとして通算5アンダーで終了。また、不動裕理さんが18番で入れれば優勝という1メートルのバーディパットから、まさかの3パットで通算5アンダーに落として、私の逆転優勝です。そして、ライバルの知姫は、18番でボギーをたたいたのが響いて単独10位と、逆転の条件が成立しました。当時は「奇跡の賞金女王」、「世紀の大どんでん返し」などといわれました。自分でもびっくりでしたが、最後まで自分のやるべきことをやって、運が味方してくれた結果でしたね。

うまい人、強い人を表すのがメルセデス・ランキング

賞金女王というのは、ひと昔前は強い人、うまい人の称号でもありましたが、今は、必ずしもそうとはいえないと思います。それは数年前から大会によって優勝賞金の差が大きくなったからです。今シーズンでいえば、1番高額な試合は5400万円で、一番少ない試合が1260万円です。同じ1勝でも賞金は4倍以上の差があります。高額賞金で好成績を残した人が賞金ランキングは上位に入りやすくなります。

今はメルセデス・ランキングがあります。国内女子ツアー及び米女子ツアーのメジャー大会での順位をポイント換算し、年間を通じて総合的な活躍度を評価するランキングです。3日間競技、4日間競技、公式競技、米女子メジャーでの順位ポイントの差はありますが、1勝の価値は賞金ほどの差はなくなります。このランキングの1位の選手には3年シードや上位50位翌年のシード権の付与とツアーでもその重要性も高めています。

分かりやすいのは不動さん。6年連続賞金女王を取りましたが、特に2003年シーズンは年間10勝を挙げて、パーオン率やパーセーブ率など主要部門すべて1位。自他ともに認める女王です。2008年の私は年間4勝を挙げましたが、トップ10入りの回数は18回で、予選落ちは3回ありました。主要部門別での1位はありません。知姫は日本女子オープンを含む優勝は2回で、トップ10入りは21回で、予選落ちは1回。部門別ではパーセーブ率など1位がいくつかあります。この年は、安定感などを考えるとどっちがうまい選手かといったら、知姫じゃないかなと思います。ちなみに「勝負強さランキング」とかあれば、私は1位かもしれませんが。

そういう意味でいうと、賞金女王は稼いだ人、メルセデス・ランキングはうまい人、強い人といえるかも知れません。そう見るとメルセデス・ランキングは面白いと思います。ただ、「獲得賞金2億円超え!」となると、プロスポーツとしてすごく魅力的ですよね。プロスポーツである以上、稼いだ人という価値は、やっぱり大きいですよね。

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こが・みほ/1982年7月30日生まれ、熊本県出身。身長167センチ、2001年プロ転向。03年にヨネックスレディスでツアー初優勝を遂げるなど、年間2勝を挙げて賞金ランキング3位。08年には年間4勝を挙げて、賞金女王戴冠。29歳になった11年、シード権保持していたがツアー引退。ツアー通算12勝。21年からGMOインターネットグループのアンバサダーに就任

取材・文/小高拓

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