こんにちは。佐伯三貴です。今回はオフシーズンに入ったプロたちの様子をお話ししたいと思います。
長かった、本当に長かった2020‐2021年のシーズンもようやく終盤。思うようなプレーができた人も、できなかった人も、例年以上に感慨深いものがあるのではないでしょうか。
2020年も例年のように3月初めにシーズンが始まり、11月の終わりまで毎週のように試合がある。誰もがそう思ってはずです。それなのに、開幕戦ダイキンオーキッドは、少し前に無観客での開催が決まり、直前になって中止になりました。沖縄で直前のキャンプをして、そのまま試合に備えていた人も多く、そうでなくとも沖縄に向かう飛行機の中で中止を知った人もいました。それほど、直前での決定でした。
新型コロナウイルスの感染が拡大しているのはわかっていても、この後、3か月も試合が全くなくなってしまうなんて、選手だけでなく多くの人が想像もしていなかったのではないでしょうか。
プロのアスリートは、目標を定めて、そこに向かって心身を整え、練習します。ところがその目標となるべき試合がなくなってしまったのです。プロゴルファーだけでなく、あらゆるスポーツの選手たちが、途方に暮れたことでしょう。4年に1度という長いスパンのオリンピックを目指す選手はなおさらだったでしょう。
1年延期して開催されたオリンピックのゴルフ競技女子代表は畑岡奈紗さんと稲見萌寧さんでした。『たら、れば』の話ですが、1年前の開催だったら、畑岡さんはとにかく、稲見さんは出場すらできなかったでしょう。けれども、1年延期されたことで、ものすごい勢いで結果を出して代表になり、銀メダルを手にすることができたのです。
試合がなくなったのも、思うようにトレーニングや練習ができなかったのもみな同じです。その中で努力をしたのも・・・。稲見さんはタイミングよく努力を結果に結びつけることができたのでしょう。
◆12月~2月、プロゴルファーのオフは多忙!
さて、ここからが本題です。ロングシーズンが終わって、選手たちはホッと一息ついている・・・と、みなさんは思っているかもしれません。12月、1月、2月と3か月もオフ?いいなぁ。そんな風に感じる方もいるでしょう。けれども、考えてみてください。シード選手の場合、残りの9か月間は、ほぼ休みなく働いています。試合は毎週なので、その合間は練習とトレーニング、体のメンテナンス、出かける準備(洗濯なども含みます)で終わってしまいます。女子プロの場合、美容院やネイルなどの身だしなみの時間も必要です。移動も、車で2時間程度ならとにかく、5~6時間かかることも珍しくありません。
今までの話は、試合でプレーすることだけを考えた場合です。トッププロになればなるほど、合間を縫って何かの撮影や取材が入ったり、スポンサー関係の仕事が入ったりします。これが9か月続くのです。週休2日なんて、夢のまた夢です笑。
その後のオフシーズン。みんなクタクタに疲れています。どんなに若くても体が悲鳴を上げていて当たり前です。まずは、休むこと、体のメンテナンスをすることが最優先になります。
私の場合は、シーズンが終わった瞬間に思うことは「とりあえず寝よう」ということでした笑。疲れた体に休息を与え、メンテナンスに入るのがオフの始まり。12月は体のケアと、シーズン中に気になっていたトレーニング方法などを試す。シーズン中に新しいところに行くのは怖いので、治療院などもこの時期に行ってみることが多かったですね。旅行も12月中に1度行く程度でした。
とてもいい結果を出した選手や、人気選手は、この12月がものすごく忙しくなります。休息と体のケアだけでなく、JLPGAアワードをはじめとする様々な表彰式などのイベントが待ち構えているからです。さらに、スポンサーへのお礼やイベント、契約の更新、新しいスポンサーが増えるといううれしい仕事も待っているかもしれません。
テレビの年末番組などに出演したり、様々なメディアの取材をまとめて受けることができるのもこの時期です。日頃、ゴルフに興味のない方にも、アピールできるため、これも大切なプロの仕事の一つです。
◆ハワイでの自主トレでは、あのプロと一緒!
私の場合は、お正月は少しゆっくりして、1月4日くらいから始動していました。国内でも海外でも、暖かいところで体を動かして球を打つ。3月の開幕に向かって、徐々に体とスイングを作っていくのです。と、言っても、トレーニングはオフだけでなく年間を通してやっていました。疲れていた時でも筋力を維持する必要があるからです。
キャンプで海外に行く選手は少なくありませんが、今年はまだコロナがどうなるか微妙な状況です。海外への渡航が緩和されつつあるとはいえ、簡単ではないので、日本でトレーニングや練習をしやすい場所を探す人のほうが多いのではないでしょうか。
いずれにしても、オフシーズンをどう過ごすかは、次の長いシーズンを乗り切るための大切なカギを握っています。今回のロングシーズンで結果を出せた人も、そうでなった人も、必死で次のステップに向かう“潜伏期間”を過ごすことになります。
私は毎年、ハワイで自主トレをしていたので、そこで必ず一緒になったのが、自慢の後輩、松山英樹くん。ここでは“くん”なんて書きましたが、実は直接話しかける時は『坊ちゃん』と呼んでいます笑。マスターズ優勝者となった今でも変わりません。
理由ですか?う~ん。東北福祉大の後輩なので、彼が学生だった頃は『松山くん』と呼んでいました。でも、もう『松山くん』って感じでもないし『英樹』でも『松山』でもないなぁ、と思って、出てきたのが『坊ちゃん』。そんな坊ちゃんと、オフは毎年ゴルフをしています。
取材・文/小川淳子 写真/Getty Images