Aは“あり得ない”のA⁉女性はLシャフトから始めるべし【思い込みに喝!QP和尚のギアかけ込み寺】

「Regina-web読者のみなさま、こんにちは。ワシの名はQP和尚。ゴルフが好きで、ギアの知識を少しだけ蓄えておる。そして10数年ほど前から、ゴルフを愛する多くの方々のクラブのお悩み相談を受けるようになった。俗世では、クラブに関して間違った知識をお持ちの方が実に多い! そこで、クラブの正しい知識を広めるために、ここに筆を執ることを決めた。クラブの正しい知識を持っておれば、ゴルフの腕も格段に上がるものぞ」

教えてくれたのは・・・

QP和尚(きゅーぴーおしょう)/中学時代は生徒会長、現在はPTA会長と根っからの頼りになる男。これまでのべ3000人以上のクラブの悩み相談に応えている。10年前はドラコン競技に挑戦し、最長382ヤードの記録を持つ。また、“レッスンプロ日本一”を決める大会で3位に入ったことがあるなど、ちょっぴり腕も立つ。

◆軟らかいシャフトは飛ぶし、スイングもよくなるのじゃ!

最近、ゴルフをたしなむ女性が増えておるようじゃ。ワシの元にもクラブの相談に来る女性の方が多い。よく聞かれる質問が、シャフトについてじゃ。一見、ただの棒のように見えるがモデルによって硬さや重さ、しなり方に違いがあり、何が自分に合っているのかを相談に来られる。たしかに、種類が多すぎて分からないという意見はよく分かる。

そもそもシャフトとは、とても重要な役割を担っておる。野球のバットと違い、しなる。そのしなり戻りを利用してクラブのパワーをボールに伝えて飛距離やボールの高さを出してくれる。加えて、芯に当たりやすいかどうかも、シャフトによって変わるのじゃ。同じヘッドでもシャフトが違えば“違うクラブ”といっても過言ではない。だから、プロゴルファーや上級者は、シャフト選びにこだわりを持っている方も多いのじゃ。

◆L、A、R……シャフトの硬さはどう選ぶ?「女性向けシャフト」の誤解

俗世では、L、A、R、S、Xとフレックスと呼ばれるシャフトの硬さを表す表記がある。Lが一番軟らかく、Xに行くほど硬くなる。

女性向けといわれるのがLとAじゃが、ワシの中ではAは“あり得ない”のA、もしくは“曖昧”のAと考えておる。調味料の“塩コショウ”のサジ加減ぐらいしか差がないものがほとんどじゃからな。

ゴルフを始めたばかりの女性で、「昔競技スポーツをやっていたから体力はある」と最初からAシャフトを選ぶ方も多いと聞く。じゃが、基本的に女性はLシャフトを選んだ方がいいとワシは考える。ゴルフの上達はシャフトをうまく使えるかどうかにかかっている。最初に軟らかいシャフトを選んで、しなり戻りを使ってクラブのパワーをボールに伝えることを理解できれば、スイングもよくなり、ボールも上がるようになる。

とくに女性は、ボールが上がらないことに苦労するので、クラブに助けてもらう方が得策じゃ。しなりを感じられない硬いシャフトを使って飛距離を出そうとか、ボールを上げようとすると、スイングに変なクセがつきかねない。

今、Aシャフトを使ってボールが上がらないという方は、すぐにでもLを手に取ることをオススメしたい。

◆QP和尚が語るAシャフトの存在意義、それは……

ではなぜ“Aシャフト”なるものが存在するのか? それは、日本の文化が関係しているように思えるのじゃ。男性用のシャフトにRとSの間のSRが作られたのは、Rよりも見栄を張りたいゴルファーのため。Sでは硬いから、その間を作ろうという発想だったのじゃ。女性といっても体力は千差万別。体力に自信のある方向けにAというカテゴリーを作ったといえる。最初からAを選ぶ必要性はないと思っておる。迷うことなかれ。

◆Lシャフトを卒業したいと思ったら?フレックスを変えるタイミング

ゴルフを続けていくとスイングが固まり、技術もついてくる。そうすると、Lシャフトでは物足りなく感じる方も出てくるじゃろう。シャフトの硬さを変える目安は、ボールの高さ。あきらかにLシャフトではボールが上がりすぎていると感じたら、硬いモデルを試す価値はあると思うのじゃ。ここでもAは不要。明らかに持て余していると思ったら、Rシャフトに手を伸ばすのも悪い選択ではない。

◆Rに替えるタイミングはボールの上がり具合。Rといっても硬さは千差万別なので、振り心地に良さを大切にせい!

『Rシャフト』といっても、一筋縄ではいかないのじゃ。Rというのは基本的に男性向けのR。男子プロゴルファーが使うようなアスリート向けモデルのRと、シニア向けの軽量系シャフトのRでは硬さが明らかに違う。最近では女性向けのシャフトも登場し、そこにもRが存在する。一般的にはアスリート向きモデルのRが基準で、軽量系シャフトと女性向けシャフトのRはそれよりも軟らかい。RとAの間という認識でよい。

Lシャフトを卒業したいと感じたら女性向けシャフトのR、もしくはシニア向けの軽量系シャフトのカテゴリーのRを試すとよい結果が出るように感じる。男性並みに40m/s以上のヘッドスピードがある女性なら、アスリート向けモデルのRでもよかろう。ただ、同じカテゴリーの同じRでもメーカーによって硬さが違うもの。これは各メーカーに明確な基準がないために起こる事象である。実際にスイングをしてみて、振り心地の良さは大事にするといい。

シャフトのカタログや紹介記事を並べてみると、「強い球が出ます」「左にひっかけません」「ボールが上がりやすい」などのうたい文句が見受けられるが、これはあくまで物性的な話。毎回同じようにスイングできる試打マシンが打った場合に、その特性が出るもので、人間はそんな単純ではない。しなりを感じたり、特性を感じたりするから必ずしもうたい文句通りにはならないものじゃ。自分が振った感じで芯に当たるものが振り心地のいいシャフト。芯に当たらないと思ったら、それは使うべきではない。

先ほども言った通り、『ボールが上がっているか、芯に当たっているか』というのがシャフト選びの大切な要素じゃ。ボールが上がるということは、キャリー(1バウンド目)の飛距離が出るので、バンカーも超えやすくなるし、必然的に飛距離も伸びやすくなる。ボールが上がりにくいと思ったら、使わない方が得策じゃ。シャフトに合わせた自分のスイングでボールを上げようとしてしまうのは、スイングに悪い癖がつき、ミスショットの元になるということを、ゆめゆめ忘れることなかれ。

【今週の喝!】体力があるからAシャフトと決めつけることなかれ

取材・文/小高拓 撮影/山代厚男 クラブ協力/G Le2(ピンゴルフジャパン)撮影協力/小石川大正住宅

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