こんにちは! ハウスキャディ歴●年のB子です。数日前の事。ティショットでボールを曲げてしまった客さまが、クラブを持って林へと入って行き、なかなか戻ってこない……ということがありました。お客さまのボールは、遠目でも見える位置にあったのに、違うボールだったのかな? と慌ててそちらに向かってみれば、彼の手には見覚えの無い数個のボールが…。
自分のボールを探しているはずが、見つかるのは自分のものではないボールばかり。気が付けばあれもこれもと拾うことが楽しくなって、ゴルフをしに来ているのか、ボールを拾いに来ているのかわからなくなる。そんなお客さまがいらっしゃいます。でも、それちょっと待って! ロストボールを持ち帰ることは、実は窃盗罪に当たるかもしれません。
コース内に落ちているボールは誰の物?
3分間探しても見つからなければ、ロストボール。ペナルティも嫌だし、ボールが無くなるのも嫌ということで、お客さまもキャディも必死でボールを探します。それでも見つからないというのは珍しいことではありません。日差しによって見にくかったり、枯葉などに隠れていたり。傾斜のきつい場所にあるOBなど、探しに行かずにあきらめてしまうこともよくあります。今日はいくつボールを失くした、なんて会話も、ゴルファーにとっては聞き慣れたものですね。
なぜこんなところに? という場所にボールが落ちていることもあります。カートの道の脇、誰もが見落とすはずが無いような場所に落ちているボール。木などに当たって、思わぬ方向に跳ねて見つけてもらえなかったのか、木の上に乗ってしまっていたボールが風で落ちて来たのか。カラスが運んできたなんて、嘘のような本当の話もあります。
場所よっては、何かの卵かのようにゴロゴロと落ちているボール。これかな? あれかな? と拾っている内に、気が付けば手元には大量のロストボールが……。今度は池に落ちたボールを拾ってみたけれど、自分のボールじゃなかったなんてことも。あれもこれもと確認している内に、大量のボールが池のまわりに水揚げされていたり、ということもあります。そういったボールは放置するわけにもいかず、キャディが回収しています。
さて、そんな風にして拾ったボールですが、それを持って帰ることは犯罪と言われています。実際のところどうなのでしょうか? 少し調べてみました。
プレーヤーがボールを見つけられずにその所有を放棄した時点で、ボールの所有者はゴルフ場へと移ります。ゴルフ場がそれらのボールを回収し、再利用を予定しているときは、許可無く持ち帰ることは窃盗罪になります。実際に、窃盗罪として取り扱われた事例もあります。
ただ、ゴルフ場がそういったボール全てを把握できているかというと、それは全く無理な話です。所有権の主張がされないまま放置されたボールがそこかしこに落ちていれば、拾いたくなる気持ちもわからなくもありません。1つ2つ、ロストボールを持ち帰ったところで、よほど悪質でない限り実際に検挙されるというケースは稀なはず。何より、自分のボールと区別しにくいため、他のボールが落ちていることを嫌うお客さまもいらっしゃいます。
ただし、ロストボールを拾いあげる前に、もう少し考えてみてほしいことがあります。
そのボール拾うの、ちょっと待って! 窃盗か否か…それ以前に考えたいこと
綺麗なボールが落ちていれば、思わず拾ってしまいたくなるものです。けれど、拾う前に一度、まわりを見てみてください。それが間違いなく所有権を放棄されたロストボールかどうか、断言できるものでしょうか? 時にありえないような場所から「私のボール見ませんでしたか?」と、探しに来るゴルファーもいることを忘れないでください。
とくに、隣接しているホールがある場合、普通に考えたらありえないような場所でも、何かに当たるなどして予期せぬ方向に飛んでしまうこともあります。こんな所まで飛ぶはずが無いという思い込みは捨てましょう。ボールの持ち主が意外なところから現れるというのも、決して珍しい話ではありません。せっかく探しに来たボールを、ロストボールと勘違いされて持っていかれてしまった……と想像したら、悲しいですよね。
「間違いなくロストボールだ」と自信を持って言えるボール以外は、見なかったことにしてその場に置いておく。それもゴルフのマナーのひとつと言えるかもしれませんね。
◆キャディのB子 プロフィール
キャディのB子/あるゴルフ場のアルバイトキャディ。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、大学のゴルフサークルに所属。就職活動に失敗し、ハウスキャディのアルバイトをして就職先を探すはずが、キャディが天職と気づく。シャンクが一番の敵。