国内女子ツアー第5戦、ヤマハレディースオープン葛城は、プレーオフの末、穴井詩プロが4年ぶりのツアー4勝目を飾りました。今年のオフはドライバーショットの方向性を上げること目標としていた穴井プロ。効果はボールストライキングが36位から6位に上がったことを見れば明らかです。でも、そもそもボールストライキングってどんなものでしょうか?
今回もゴルフにまつわる「数字」をヒントにその魅力を解説していきます! これさえ読めば、もっとゴルフがしたくなる! 楽しくなるはずです♪
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◆ボールストライキング1位はショットの女王の証
日本女子プロゴルフ協会のホームページを見ると、会員である選手のプロフィールや戦績などがひと目で分かります。ヤマハレディースオープン葛城で優勝した穴井詩プロのページを開き、今年の年度別記録を見ると、気になる数字がありました。それは、ボールストライキングで6位(24ポイント)に入っていることです。昨年は36位(71ポイント)、20‐21年は20位(44ポイント)、19年は19位(47ポイント)で、トップテン入りは今回が初めてです。
さて、このボールストライキングとは何を意味するのでしょうか? 簡単に言いますと、パーオン率の順位とトータルドライビングの順位を足した数字がポイントになります。穴井プロの場合、現在、パーオン率が3位、トータルドライビングが21位なので、合計24ポイントになります。ちなみに、パーオン率を説明すると、まずパーオンとはパーの打数から2を引いた打数以内でグリーンに乗せることを言います。パー3なら1打で、パー4なら2打以内で、パー5なら3打以内でグリーンに乗せればパーオンとなります。パーオンに成功したホールが、自分がプレーしたホール数のうち、どれだけあるかがパーオン率になります。
また、トータルドライビングとは、ドライビングディスタンスの順位とフェアウェイキープ率の順位を足した数字を順位づけしたものです。
つまり、ボールストライキングの順位が高ければ高いほど、ドライバーは飛んで曲がらないし、アイアンショットの方向性と距離感が正確ということになるわけです。1位の選手はまさに“クイーン・オブ・ショット”なんです。
穴井選手の場合、国内女子ツアーでは屈指の飛ばし屋であり、ドライビングディスタンス1位の常連で、その飛距離を利用してパーオン率でも度々トップテンに入っていました。ただ、フェアウェイキープ率がネックで、昨年は55・5930%(90位)、20‐21年は57・0412%(83位)、19年は55・6143%(95位)でした。やっぱり、飛ぶ人はどうしても曲がるので、フェアウェイキープ率が低くなるのは致し方ないのでしょう。
◆ドライバーショットの方向性アップがパーオン率にも好影響
当然、穴井プロもそのことは気にかけており、シーズンオフはドライバーショットの方向性アップをテーマに取り組んだそうです。「スイング的にはあまりいじってはいませんが、アドレスを変えました。以前は猫背気味だったので、今は背中が丸くならないように構えています」。猫背気味だとどうしてもテークバックでクラブがスムーズに上がらず、それが曲がるショットの一因になっていたと言います。
「あとは目一杯の力で振らなくてもいい状況で、つい振ってしまうところですね。今季はそこに注意しています」。アドレスを変え、振り過ぎに注意したところ、ヤマハレディースオープン葛城では、初日から3日目までにフェアウェイを外したのが1日1回、最終日だけが3回でした。今季のトータルでも62・9464%にまでフェアウェイキープ率が上がっているのです。順位的にはまだ70位ですが、例年と比べたらかなりいいことが分かります。
面白いもので、ドライバーショットの方向性がよくなるとパーオン率も上がり、77・0833%で3位に入っています。
今回の優勝もショット力が上がったからでしょう。今年で36歳を迎える穴井プロですが、上昇志向は止まらず、今年は複数回優勝を目指すと言います。単なる飛ばし屋ではなくなっただけに、十分可能性はあるでしょう。ぜひ、今後も穴井プロのボールストライキングに注目です!
◆山西英希/プロフィール
スポーツライター。ゴルフを中心に幅広く取材、執筆。