ラウンド中、プレーヤーが唯一助言を求めることができるキャディという存在。たった一打で賞金が何百万円と違ってしまったり、もしかしたら人生が変わってしまったり……というプロゴルファーにとって、その存在は大きなものです。
そんなプロゴルファーのキャディを生業としている「プロキャディ」ですが、職業としてはどうなの? 儲かるの? では、実際いくらぐらい報酬をもらっているのか、ちょっと気になる疑問にお答えします!
◆ 収入はプロの成績次第⁈ プロキャディの収入源
プロキャディには、プロとゴルフ場以外では行動を共にしないキャディと、ホテルから食事までほぼ一緒に行動しているキャディといて、それによって給料の形は変わってきます。
行動がプロと一緒であれば、宿泊費、移動費といった全ての経費はプロ持ちで、日給〇〇円という形が多いようです。プロと別行動であれば、週〇〇円で経費は全てキャディ自身持ちという形が標準的です。
プロと別行動で週給の場合、もちろん個人差はありますが、一般的には週10万円から15万円の基本給に、プラス獲得した賞金の数パーセントのボーナスという場合が多いようです。かなり高給取りのように感じるかもしれませんが、宿泊費や移動費といったトーナメントを転戦する上でかかる経費は、開催される場所によって大きく変動。遠方であったり、安価な宿泊先が無かったりした場合など、週10万円では足らない場合も少なくありません。ボーナスも、獲得賞金次第。安定収入とは、程遠い職業と言えるでしょう。
プロの獲得賞金によっては、赤字にさえなってしまうかもしれないプロキャディという仕事ですが、それで生活していけるの? と思われるかもしれませんね。ところが、ここ十数年でそんなプロキャディを応援してくれる存在が増えてきています。
プロにスポンサーがついているように、プロキャディにもスポンサーがいます。彼らの帽子やウェアなどにつけられたワッペンが、彼らを支えてくれているスポンサー。生活していくのもやっとという状況にいつなってもおかしくない彼らが、集中してキャディ業務に当たることができるのは、そういったスポンサーの応援によるものが大きくなってきています。
〈左〉上段:鈴木理恵キャディ(フリー)/下段:小岸秀行キャディ(木下稜介プロ、谷原秀人プロ)
〈中〉上段:佐藤賢和キャディ(石川遼プロ)/中段:串田雅実キャディ(フリー)/下段:新岡隆三郎キャディ(岩田寛プロ、上田桃子プロ)
〈右〉左:清水重憲キャディ(フリー)/中:渡辺宏之キャディ(倉本昌弘プロ)/右:小田亨キャディ(武藤俊憲プロ)
◆ 選手たちがプロキャディを雇用する理由は?
さて、プロの立場で考えると、週十何万も払ってプロキャディを雇うより、コースを熟知しているハウスキャディの方が良いのでは? と思うかもしれません。もちろん、プロキャディを使うメリットがあって雇っていることがほとんどなのですが、“使わざるをえない、使った方が得”という状況があるのも事実です。
現在ゴルフ業界は、全国的に慢性的なキャディ不足。トーナメントが開催されているコースも、その例外ではありません。開催コースで十分なキャディが用意できないとなると、近隣のゴルフ場に協力してもらったり、派遣キャディや学生のアルバイトを雇ったりということになります。そのため、トーナメントのキャディフィも年々高くなっていて、帯同のキャディを連れて行った方が安いという場合さえあるほど。レギュラーツアーでないにも関わらず、帯同のキャディを連れて行かなければダメという大会さえあったほどです。
キャディは必ずつけなければいけないの? という疑問をたまに耳にしますが、男女ツアー共に「キャディをつけなければならない」とトーナメント規定に明記されています。セルフでプレーしている姿を見たことがあるかもしれませんが、あれはコロナ禍の特別措置。つまり、キャディの確保は、専属のキャディがいないプロにとっての懸案事項となってきていると言えます。
けれども、「キャディをつけなければいけないから」という理由だけでプロキャディを雇っているわけではありません。ベテランプロの多くがほぼ専属といった形でプロキャディを使っているということからもわかるように、トーナメントの戦い方を熟知したプロキャディという存在はとても重要。
優勝請負人と言われるキャディがいるほどに、緊張感のある戦いの中で的確な助言をくれる存在は、プロにとっても大きなものなのでしょうね。
◆おだみなプロフィール
おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。