春はゴルフシーズン到来! でも、花粉症の方にとっては憂鬱な時期でもありますよね。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ…。症状に悩まされて、せっかくのゴルフが台無しなんてことになりたくないものです。今回は、日本国内でも希少な世界標準のアレルギー専門クリニック「アルバアレルギークリニック」院長、続木康伸医師に、花粉症ゴルファーが快適にラウンドできるよう、効果的な対策を聞きました。
◆花粉症治療法の最新動向と、画期的な新薬『オマリズマブ』
続木医師(以下、続木)「実はスギ花粉の飛散量は今後はピークを過ぎ、年々減っていくと予想されています。それでも患者数が増えている理由は、いくつか考えられます。近年、私たちの生活環境は清潔になりすぎました。ウイルスを攻撃する免疫細胞が過剰に働き、アレルギーを攻撃する細胞が活発になるんです。これが花粉症患者増加の一因と考えられています」
――清潔すぎる環境は花粉症患者を増加させるということですね。今や日本は世界でも珍しいほど「清潔」と言われるなか、花粉症の症状を抑える画期的な治療法はあるのでしょうか。
続木「近年注目されているのが 『オマリズマブ』という新薬。従来の抗ヒスタミン薬とは異なり、ヒスタミンの放出自体を抑制し、症状を劇的に改善する効果が期待できます。ただし『オマリズマブ』は高額で、処方できるクリニックも限られていますし、国が定めた要件を満たさないと使用できません。さらに、根治を目指すためには、皮下免疫療法や舌下免疫療法といった免疫療法を併用することが必要です。そのため、花粉症自体の治療期間が5年以上かかるケースも多く、治療費も安い金額ではありませんが、決して治らないものではありません。花粉症かな? と思ったら、一度医療機関に相談してみてください。アレルギー治療の選択肢は増えています。自分に適した治療方法がわかれば、対処しやすくなりますよ」
――日常生活で、すぐにできる対策はあるのでしょうか。
続木「まず、たばこと飲酒は控えましょう。たばこの煙はアレルギー症状を悪化させるため、花粉症の時期は避けた方が無難です。また、飲酒も花粉症の症状を悪化させることがあります。抗ヒスタミン薬などを服用している場合は眠気など副作用が強まる可能性もあります。一方で、ヨーグルトの摂取はおすすめです。豊富な乳酸菌が含まれていて、乳酸菌には免疫のバランスを整える効果が期待されています。花粉による症状を和らげる可能性があるので試してみてもよいでしょう」
◆プレー前日からアフターラウンドまでの花粉症対策は?
続木「軽症の方の場合、市販の薬で症状を抑えられる可能性があります。ただし、重要なのはラウンド当日ではなく、前日から飲み薬を服用することです。効果が出るまでに時間がかかるので、前日から服用することを覚えておきましょう」
――市販薬で効果が得られない場合はどうすれば良いのでしょうか。
続木「花粉症の原因物質はスギとは限りませんので、医療機関への相談をおすすめします。医師がアレルゲン検査を行い、原因物質を特定した上で、適切な治療法を提案してくれます。根治を目指す免疫療法は、長期間の継続が必要なので、まずは自身のアレルゲンを特定しておくことが重要です。花粉の種類によっては、飛散時期も異なるのでまずは自身の状態を把握しておくことで、タイミングも適切に見極めることができます」
――くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状は、スイングやパットに集中できなくなる原因と言われていますね。花粉症に対処するための薬を服用する際に、注意すべきポイントはありますか?
続木「抗ヒスタミン薬の中には、頻度は少ないですが、眠気を引き起こすものもあるので注意が必要です。とくにゴルフのように集中力が必要とされるスポーツでは、花粉症の症状も副作用もスコアに影響をさせないよう、服用するタイミングが非常に重要です。そのためにも自身のアレルゲンとその治療法を理解しておくことが大切ですね。また、飲み薬のほかにも、ラウンド中は、目薬や点鼻薬、花粉症専用のゴーグルやマスクの活用、花粉防止スプレーなども効果的ですので、ぜひ持参することをおすすめします」
――なるほど。服用のタイミングにも気を付けなければならないのですね。ゴルフをする地域によって異なることはありますか?
続木「花粉の種類は、スギ、ヒノキ、ヨモギ、イネ科などがあり、地域や時期によって異なります。ゴルフ場では、立地や植生によって花粉の種類や量が変わります。花粉情報は、地域別にインターネットで確認できるので自身のアレルゲンが特定できれば、どのゴルフ場でどのように対処すればいいのか、よりわかりやすくなりますよ」
――ラウンドを終えた後に注意すべきことがあれば教えてください
続木「とにかく花粉を洗い流すことが重要です。ゴルフ場には浴場があると思いますので、プレー後は必ずシャワーを浴びること。体に付着した花粉を物理的に取り除きましょう。ゴルフウェアは花粉を取り払い、帰りの車には持参した服に着替えて乗り込むことを徹底しましょう」
◆まとめ
花粉症はゴルファーにとって天敵ですが、花粉症治療の選択肢は進化しています。花粉症は根治が難しいイメージがありますが、適切な対策と治療で快適にゴルフを楽しめそうです。
まずは自身のアレルゲンを特定し、自分に合った対策と治療法を選択しましょう。花粉のピーク時期に注意を払いながら、適切な対処で、快適にゴルフシーズンを過ごしてくださいね。
【教えてくれたのは】「アルバ アレルギー クリニック」院長 続木康伸医師
新生児から妊婦まで、九州や東京からも患者が訪れる札幌のアルバアレルギークリニック院長 。「カズレーザーと学ぶ。」出演、「保湿を変えればアトピーは治せる(学研)」著書。体の中からキレイになる医療を目指しています。アトピー性皮膚炎で肌がデリケートな方の医療脱毛を得意とし、7歳から医療脱毛を行っている。
取材・文/夢書房