ゴルフに詳しくない人でも、たとえば「丸ちゃん」こと丸山茂樹プロの名前は、知っている人は多いでしょう。日本男子ゴルフの知名度をあげ、貢献してきた選手のほとんどが日本大学出身者でした。ところがここ10年で情勢は変わり、東北福祉大学出身のプレーヤーが台頭してきました。ゴルフ選手の出身校を切り口に近年の日本男子ゴルフ界をみてみましょう。
◆長い間日本男子ゴルフ界を牽引していたのは日本大学だった
1956年(昭和31年)同好会から創立された日本大学ゴルフ部ですが、たくさんの有名なゴルファーを輩出してきました。「丸ちゃん」の愛称で知られている丸山茂樹プロ。おしゃれな帽子がトレードマークで永久シードを獲得している片山晋呉プロ。2023年国内シニアツアーの賞金王に輝いた宮本昌勝プロは、ゴルフを詳しく知らない人でも、名前だけは聞いたことがあると思います。こちらの3名を含めて日本大学出身のゴルファーは長い間日本のゴルフ界を牽引してきたといえるでしょう。
加えて、日本大学は学生ゴルフの「信夫杯争奪日本大学ゴルフ対抗戦」で第19回(1973年)から25連覇を果たし、ずっと日本アマチュアゴルフ界のトップに君臨していました。
ところが、その均衡を崩したのが1998年の大会。東北福祉大学が日本大学の26連勝を阻止しました。ここから徐々に東北福祉大学の快進撃が始まるのでした。
◆日本男子ゴルフツアー出場者が10年で東北福祉大学出身者が上回る
東北福祉大学出身者として、まず名前が挙がるのは松山英樹プロです。2024年の米国男子ツアー「ザ・ジェネシス招待」で勝利し、ツアー9勝を果たしました。さらに、日本のメジャー大会である日本ゴルフツアー選手権においても、2022年の覇者は比嘉一貴プロ。2023年は金谷拓実プロと、東北福祉大学出身者の選手が大活躍しています。日本大学出身者は2019年の堀川未来夢プロ以来優勝から遠のいています。
参加できた選手の人数においても、2011年の日本大学出身者は19名、東北福祉大学出身者は10名だったものが、2023年に行われた「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 」では出場者132名中、日本大学出身者は15名、東北福祉大学出身者は29名となり、東北福祉大学が大きく上回りました。ここ10年でゴルフ界の勢力図が変わってきたことがうかがえます。
◆東北福祉大学の強さの秘密は充実した練習環境と学生同志の日々研鑽にある?
東北福祉大学は、仙台にあるので冬場でもボールが打てるように、立派な室内練習場やトレーニング設備が完備されています。それだけではなく学生寮の隣にいつでも練習ができる通称「砂地」と呼ばれる150Yのパー3があります。ベアグラウンドからのショットなので、かなり難しく、プロ志望の学生でもグリーンオン率は2割ほどの難関コースとなっています。こうした充実した設備の中で先輩や後輩たちと切磋琢磨していくことで強いプロを輩出できているのです。
◆次世代の国内男子ゴルフを牽引していくのは誰か!
80年の「全米オープン」であのジャック・ニクラウスと激戦を繰り広げた、青木功プロ。ジャンボ尾崎の愛称で有名な尾崎将司プロが国内男子ゴルフの知名度と人気を爆上げしました。そのあと丸山茂樹プロや片山晋呉プロ、宮本昌勝プロなどの日本大学出身の選手が引き継ぎ、さらに石川遼プロや東北福祉大学出身の松山英樹プロにバトンタッチしてきました。今のところ東北福祉大学の出身者のほうが勢いが強い状況ですが、もちろん日本大学出身者のゴルファーが弱くなったわけではありません。日本ゴルフツアー選手権のベスト10には必ず入ってきています。
日本男子アマチュアの最強集団はどこなのか、日本学生ゴルフ選手権の結果を見ると、大阪学院大学が第三勢力となってきています。2019年から2023年の覇者は大阪学院大学です。さらに、信夫杯争奪日本大学ゴルフ対抗戦においては、2011年から2021年の10年間で9回ベスト3に入り込む強豪校です。
次世代の国内男子ゴルフを牽引していくのは、歴史のある日本大学か、ここ10年で力をつけてきた東北福祉大学か、はたまた第三勢力になりつつある大阪学院大学なのか。今後の男子ゴルフ界から目を離すことができません。
取材・文/夢書房