妊娠中のゴルフ、どうする? 産婦人科医に聞くベストな付き合い方

女性は生理、妊活、妊娠、出産、子育て、更年期など、年齢やラフステージによって生活環境や心身の変化が大きく、大好きなゴルフを我慢しなければならないこともあると思います。そこで「こすぎレディースクリニック」の椎名先生に、女性特有の体調とゴルフとの付き合い方についてお話を伺いました。第一弾は、産婦人科医から見た「妊娠とゴルフ」をお届けします

― 妊娠中は、やはりゴルフを控えた方が良いのでしょうか?

基本的に控えることを推奨しています。その医学的な理由は、ゴルフのスイング動作が、腹部や骨盤に強い負担をかける可能性があるためです。ゴルフスイングは、上半身と下半身を大きく捻る動作が伴うため、腹圧の増加が起こります。この腹圧の上昇が、妊娠中の身体に悪影響を及ぼす可能性があるのです。特に妊娠初期の12週目までは、流産のリスクが高いため、スイングなどの急激な身体への負荷は危険とされています。

また、長時間のラウンドや直射日光の下でのプレーは、脱水症状や熱中症のリスクを高める要因になり、転倒の危険もあります。さらに、妊娠初期はホルモンバランスの変化により血圧が低下しやすく、立ち上がった瞬間にふらつきを感じる「起立性低血圧」を引き起こしやすい時期です。そのため、やはり転倒の危険が高まります。
妊娠中は、出産に向けて骨盤の靱帯を広げる作用がある「リラキシン」というホルモンの影響で、関節や靭帯が緩み、身体のバランスを崩しやすくなります。その結果、通常より転倒やケガのリスクが高まるのです。ゴルフだけでなく、長時間の立ち仕事や急激な運動も転倒や腰痛などの原因になるため、慎重な行動が求められます。

― 妊娠中でもできるゴルフの練習などはありますか?

一般的なラウンドは避けるべきですが、状況によってはゴルフに関連した練習を行うことも可能です。例えば、パターのストロークは急な動作が少なく、下半身への負担が比較的少ないため、体調が良ければパター練習をすることは問題ないでしょう。同様に、練習場でのアプローチなどの軽いショットも、腹部への負担が少ない範囲であれば可能ですが、思いっきりスイングしたくなる場合は、自宅でイメージトレーニングをする方が良いでしょう。
また、いわゆる「ライダー」として自分はプレーせずにラウンドに帯同することは、身体の負担は少ないと考えられます。しかし、長時間の屋外活動になるため、気温の変化には十分な注意が必要です。また、自分がプレーできないことにストレスを感じてしまうなら、無理をせず控えた方が良いでしょう。

― 具体的には、いつからいつまでゴルフを休むのが望ましいでしょうか?

「妊活」期間中は特に制限はなく、通常通りプレーを楽しむことができます。妊娠が発覚した後は、直ちにゴルフを控えるのが望ましいです。妊娠に気づかずにプレーをしてしまった場合、すぐに深刻な影響が出るとは限りませんが、慎重に行動することが重要です。
産後は、1ヶ月検診で特に身体に問題がなければ、軽い運動から再開できます。急に激しい運動をするのではなく、ウォーキングなどから始めましょう。ゴルフのフルスイングを再開するには、産後3〜6ヶ月程度を目安にするのが良いでしょう。

― プロの試合を観戦することは問題ないでしょうか?

テレビでの観戦は、極度に興奮しなければ問題ありません。しかし、コースに行って試合観戦する際には、以下の点に注意してください。

・長時間の歩行を避け、こまめに休憩をとる。
・転倒リスクを避けるため歩きやすい靴を履き、足元の悪い場所を避ける。
・混雑する場所では人とぶつかるリスクがあるため、安全な場所を選んで観戦する。
・特定のプロについて歩くより、安全な場所に座って観戦する。
・地面に座ると冷えるため、クッションや折り畳み椅子を持参する。
・夏場は日傘などの熱中症対策を徹底し、冬場は十分な防寒対策をする。

特に炎天下での観戦は、体温が上昇しやすく、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、こまめな水分補給や適度な休憩が必要です。

また、妊娠後期はお腹が大きくなり足元が見えにくくなるため、転倒リスクが高まります。階段や街中でも十分注意しましょう。さらに、妊娠中は免疫が低下するため、人が多い場所では感染リスクも考慮する必要があります。

― 妊娠中でもできる運動やゴルフ関連アクティビティはありますか?

妊娠中は激しい運動を避ける必要がありますが、以下のような活動は比較的安全に行うことができます。

・体幹トレーニングとして、軽めのピラティスやストレッチを取り入れる。
・ゴルフのルールやマナーの学習を行い、知識を深める。
・最新のゴルフギアに関する情報を収集し、復帰後の準備をする。
・自宅で軽いパター練習を行い、感覚を維持する。
・レッスンやプロのスイング動画を見て、イメージトレーニングをする。

ゴルフがプレーできなくても、知識を深めたり戦略を学んだり、イメージトレーニングをすることで、復帰後のスキル向上に役立ちます。

妊娠中のゴルフは控えるのが基本ですが、適切な運動を取り入れながら、プレー以外でゴルフを楽しむ方法を見つけましょう。また、妊娠中の運動は体調管理や産後の回復にも良い影響を与えるため、適度なエクササイズを継続することが望ましいです。マタニティスイミングやヨガなど、妊婦向けプログラムを提供している施設もありますので、担当医に相談しながら、参加すると良いでしょう。

お話を伺った先生/こすぎレディースクリニック 院長 椎名邦彦先生
日本産婦人科学会、産婦人科専門医。聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学病院で産婦人科医局長を勤める。不妊治療から美容皮膚科まで幅広く学び、現在はこすぎレディースクリニックの院長として幅広い女性の悩みに対応。

取材・文/中野紗瑛 取材協力/こすぎレディースクリニック 川崎市中原区小杉町3-1501-1 セントア武蔵小杉A棟3F

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