ボールには、飛び系とスピン系があり、それぞれのプレースタイルに合わせて選ぶことが、スコアアップにつながります。
ではいざ、ボールを買おうというとき、ボールによる価格の違いが気になる人も少なくないのでは? 結構差があって、迷っちゃいますよね。
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◆素材や構造の複雑さが価格に反映される
前回、ボールの飛びを大きく左右するのは、ボールの初速、打ち出し角、スピン量ということをお話ししました。
それぞれクラブやスイングも大きく関係していますが、これを理想に近づけるために、さまざまな研究をしています。
私たちがコースで使うボールの多くは、直接クラブに触れるカバーとその内部のコアで構成されていて、ディスタンス系は硬めのカバーで反発性能を高め、コアを柔らかくしてつぶれるようにしているし、スピン系はカバーを軟らかくしてフェースの溝に食いこみやすくしつつ、反発性を補うべくコアを硬くしています。
また、カバーの素材も、ディスタンス系は反発力が高いもの(主にアイオノマー)、スピン系は軟らかくスピンがかかりやすい素材(主にウレタン) 。ウレタン樹脂が使用されているカバーはスピンがかかりやすく、柔らかいのが特徴です。
さらにカバーの厚みにも工夫があり、ディスタンス系は反発性を高めたいので厚く(たとえば1.2mm)、スピン系は表面は至極軟らかくしたいけれど反発性も欲しいので、0.5mmなどと薄くしてあります。
スピン系ボールはウェッジの溝に食いこむよう、カバーはとても軟らかい
また、カバーとコアの間にもう一層、ミッド(または中間層)を加えたボールがあります。
ミッドは、硬いカバーの内側に軟らかい層(ミッド)を配することでクッション材のような効果で打感がマイルドになるなどの役割があります。 カバーとミッドとコア、3つの層で構成されているボールを3ピースボールと呼びます。
さらに、コアにも1層構造や2層構造があります。
1層構造のコアをステーキにたとえると、外側は硬くて内側はやわらかい“ミディアム”や全体がやわらかい“レア”など、“焼き加減”でボールの飛距離やスピン量、打感などの個性を引き出せるのですが、1層構造では限界があります。
そこで、コアを2層にすることで1層構造の限界を超え、より複雑で高度な性能をボールに与えるというわけ。 カバー、ミッド、2層コアで構成されるボールが4ピースボールです。
ボールの断面図を見ると、カバーの厚さの違いやミッドとコアの割合の差などがわかり、ショット時のイメージにも役立ちそうですね。
多層化することにより、飛距離やスピン性能、打感などの個性を、高次元で実現できるわけです。
多層化によって増える行程や、性能をアップさせるための新規材料や新構造の研究開発費を考えれば、価格が上がるのも無理のないことですね。
それに、品質を安定させるには、高い技術力をもつメーカーにしかできないことでもあります。
今後はそんなことを考えながら、ボール選びをしてみるのも楽しいかもしれませんね。
ちなみに、安いと言えば「ロストボール」がありますが、どんなにブランド品でも、池に沈んでいたり、土に埋まっていたものなど保管状況が悪かったもの。ボールはゴム製品なので、保管状態が悪いと必ず劣化します。当然、性能も落ちていると思われるので、買いたい気持ちは分かりますが、おすすめできません。
◆教えてくれたのは…
吉本舞さん/USLPGAティーチングプロ。1990年生まれ。佐賀県出身。ツアープロコーチ、森守洋氏主宰の「東京ゴルフスタジオ」(東京都三鷹市)にて、レッスン中。細かくていねいな指導に定評がある。
撮影/福田文平 取材・文/たかはしよし子