2週連続優勝を含め、今年だけで5勝。五輪の切符を実力で手に入れた稲見プロのスイングを、超人気インストラクターの伊藤祐子プロが、4回にわたって解説していきます。
◆とにかく軸がブレない! 勝つための超再現スイング
フェース面の開閉を極力抑え、強い体幹を生かした回転系スイングで確実にフェアウェイをキープ。マネするべきは、美しきアドレスの姿勢!
人気女性インストラクター・伊藤祐子さんが解説する、女子プロのスイング解説。第一回となる今回は、五輪出場が内定した稲見プロのドライバー編をお届けします。
ドライバーに限らず、「とにかく曲がらない」正解性が稲見プロの最大の武器。ドライバーショットに関していえば、平均飛距離237.42ヤード(35位)と飛ばし屋というわけではあませんが、フェアウェイキープ率は74.0260(13位)、そのふたつを合算した指標となるトータルドライビング、つまり「飛んで曲がらない」の指標となるデータは4位という数字が証明しています。(※記録はすべて7月11日時点)
つまり、稲見プロは“飛ばし”よりも方向性にこだわり、それを実現するスイングに徹底しています。
とにかく軸がぶれない。右に乗って、左に乗って、というヨコの動きでボールを打つのではなく、フェースの開閉を極力抑えたタテの回転で打つタイプ。
前傾をキープする時間が長いことも特徴です。
ここまでブレないプロは多くありません。オフの間、キックボクシングなど激しいトレーニングで鍛えたからこその、強い体幹によるものでしょう。
みなさんにぜひマネしてほしいほど、素晴らしいアドレス。
力みがなくすっと立つ姿がとてもきれい。左右のバランスも完ぺきです。この形をBOXとするならば、最後までこの中で完結するのが稲見プロのスイングです。
女子プロの多くは、つま先を15度くらい開いて立ちますが、つま先はほとんど開いていません。これは股関節が柔らかいから。カラダの柔らかい女性は、つま先を開くと回りすぎてしまいます。
ほとんどのRegina読者のみなさんは、プロのように体幹が強くなく、カラダが柔らかいと思いますので、つま先を開かないで構えるといいでしょう。スイングが締まり、ブレにくくなります。逆に、カラダが硬くて回らない、という人はつま先を開いてみましょう。
アドレス=ゴルフでいえば構えですが、住所という意味もあります。
アドレスを見れば、右に行くか、左に打つのか、スライス打つのかなど、どう打つかが分かるもの。それだけアドレスは大事だということを、覚えていてください。
始動のきっかけは、右股関節。後ろに回転していく感じです。パンツのしわを見ればわかるでしょう。
右股関節は“紙が一枚はさまる程度”がいいと、私は言っていますが、みなさんもご自身のスイングチェックするときは、このしわをチェックしてみてください。
前腕と地面が平行になったとき、手とクラブの角度が完了しています。
ここまで体の回転と、手首ではなく自然にうまれるコックをしてきましたが、手首とクラブの角度がこの先変わることがありません。
シャフトが平行になるまでもいかないくらい、超コンパクト。このコンパクトぶりは、ほかの女子プロのトップと比較すると、驚くほどです。
その代わり、おしりが完全に目標方向を向くほどボディターンしていることがわかります。とにかく捻転力が高い。始動から、股関節を使って捻転する動きをキープし続けています。
シャフトがぐるぐると巻きついたり、フニャフニャ安定しない女性は多いですが、それが一切ありませんね。
切り返しでは、ひざを左に流さず、むしろ少し下に沈み込むようにして地面をしっかりつかんでいます。
人は、高く飛ぼうと思ったとき、一度沈むことと同じです。一度沈むことによって、次のパワーを生み出します。力の弱い人は、両ひざが左に流れがちなので注意しましょう。
右足のカカトが上がっていないところに注目です。
女性にありがちですが、インパクト前にカカトが上がってしまうと、せっかくのパワーが打つ前に抜けてしまいます。
稲見プロは、べた足気味で地面をつかむ時間をキープしています。体重も右足に残っています。こうすることで、左の斜めの壁がしっかりでき、そこに向かってパワーを出そうとしていることが分かります。
稲見プロの特徴ですが、インパクトは右ひじが曲がった状態でボールを打っています。インパクト後でも右ひじが曲がったまま。これは、フェースを返さずアドレス時の角度のまま打ちたいから。 腕やクラブを使うのではなく、カラダの回転でインパクトしています。曲がらないインパクトの特徴です。これは体幹が強くないとできません。
体幹が強くない人は、腕やクラブをめいっぱい使う必要がありますが、それだけ曲がりやすくなります。
稲見プロの特徴ですが、インパクトは右ひじが曲がった状態でボールを打っています。インパクト後でも右ひじが曲がったまま。これは、フェースを返さずアドレス時の角度のまま打ちたいから。 腕やクラブを使うのではなく、カラダの回転でインパクトしています。曲がらないインパクトの特徴です。これは体幹が強くないとできません。
体幹が強くない人は、腕やクラブをめいっぱい使う必要がありますが、それだけ曲がりやすくなります。
手のローテーションが少ないのは手を使っていない証拠。
ヘッドが軸を追い越し、目標方向に完全に向いています。インパクトで終わりではなく。フィニッシュに向かってカラダを回し切った結果です。
稲見 萌寧 Mone Inami/プロフィール 1999年生まれ、東京都出身。166cm。A型。10歳からゴルフをはじめる。2018年プロテストはぎりぎりの20位で合格。翌年7月「センチュリー21レディス」優勝など賞金ランク13位で新人賞に。翌20年は1勝。21年に入り3月の開幕2戦目から2カ月と少しの間に5勝。ツアー7勝。今年度現在賞金ランク2位(2021年7月10日現在)。日本ウェルネススポーツ大学在学中 ウェア/ニューバランス 所属/都築電気伊藤園 Instagram@mone173.golf
教えてくれたのは/伊藤祐子プロ
代官山の「K’s Island Golf Academy」インストラクター。豊富なスポーツの経験を生かした一人ひとりに寄り添うレッスンは、予約解禁日に即日満了するほど人気。とくに女性からの信頼が厚い。フォロワー4.3万人以上の Instagram【@yuko_ito630golf】でレッスン動画などを配信中。会員制サロン「YUKO Premium salon」や、YouTube動画も展開。
「ツアープロにティーチングプロがついているように、アマチュアにも同じ方向を見て寄り添い、目標に導いてくれる人が必要です。その存在が私であれば、幸せです」
取材・文/たかはしよし子 撮影/Getty Images、ALBA.Net