ツアー通算7勝を挙げ、2013年には賞金女王となった森田理香子プロ。ツアーでも屈指の飛ばし屋として活躍していました。いいスイングができるようになっても、練習場と違って1発勝負のラウンドでは、毎回同じスイングをするのは難しいモノ。素振りやルーティンなど打つ前の動作で工夫することがポイントです。いいショットが出る確率が高くなる方法を紹介します。
全力素振りでも、スイングをイメージした軽い素振りでもした方がいい
ラウンド中、ボールを打つ前に素振りやっていますか? ツアープロの中にはまったく素振りをしないでボールを打つ選手もいますが、ほとんどの選手は必ず素振りをしてからボールを打ちます。もちろん私もやりますし、素振りしてからボールを打つことをオススメします。
どうして素振りをするかというと、一つは、「今から打ちますよ」って体に合図をするためです。いきなり打つとケガをする危険性もありますから。特に寒い時期は気を付けたいですよね。また、ゴルフスイングは日常的にあまりしない動作なので、スイングの動きを体にしみ込ませておくと、実際にボールを打つときに体がスムーズに動きやすくなります。
プロの中には、イメージだけ出して軽く素振りをするタイプもいれば、実際にボールを打つように全力で素振りをするタイプもいます。私は若い時は、実際に打つように全力で素振りをしていました。全力素振りをすることで、実際にボールを打つときは同じように振ればいいので、動きやすくなりますよね。
ただ、最近は軽めに素振りをするようになっています。現役を退いて毎回全力というのも疲れてしまいますからね(笑)。軽くといっても、ちゃんとスイングのイメージを出します。今、自分がスイングの中で注意している動きを意識して振ることは大切です。
私の場合は、インパクトゾーンでしっかりお腹が回ることを意識しているので、その動きを確認しながら素振りをします。他にも切り返しで左足を踏み込みから行いたい、体が早く開かないようにしたい、といったポイントがあれば、そこを意識して行うと、実際に打つときにも意識付けができます。
また、ドローとフェードと球筋を打ち分ける方は、その球筋をイメージした動きを意識づけると逆球が出にくくなります。高い球や低い球を打つときも通常のスイングと動きが変わるので、そのイメージは出しておきたいところ。それに、グリーン回りのアプローチでも、上げて寄せるのか、転がして寄せるのかでもスイングが変わってくるので、自分が打ちたいボールをイメージした素振りをすると、実際に打ちやすくなります。
そして、2打目以降の地面から打つショットの場合、傾斜などライが分かってくるので、そのライに対してどういうイメージで打つかを確認するためにも、必要です。プロが何回も素振りをする場合は、難しいショットを打たないといけないような状況の時に、しっかりとイメージを出すために行っているのです。
素振りは実際にボールを打つように全力で振るのと、スイングのイメージを出して軽めに振るのとどちらでも構わない。何も考えないで振るのは、あまり意味がない。森田プロは若い頃は全力素振り、最近は軽い素振りにしている
軽い素振りの場合は、自分がスイングで気をつけているポイントを意識するといい。森田プロは、インパクトゾーンでしっかりお腹を回すことを意識している。体を使ったスイングをするにはお腹を意識するのはよさそうだ
毎回同じ動作で構えに入ると、重圧に負けない安心感が出る
素振りと関連するのが、プレショットルーティンと呼ばれる打つ前の準備動作です。ティショットでいえば、ティアップしてから構えてスイングの始動をするまでの一連の動きです。
私は、最初にボールをティアップし、ボールの横で2回素振りをします。そして、ボールの後方から目標を定めて、ボールの近くに目印を作り、だいたい4歩ぐらいでボールの横に移動します。そして両足を揃えた状態でフェース面を目標に対して真っすぐ合わせて、目標を確認しながらスタンスを広げてアドレスを作ります。多少の誤差はありますが、基本的にこのプレショットルーティンは変わりません。
打つ前の一連の動きを決めることで、余計なことを考えなくなるので緊張するような場面でも、いつも通りのリズムでスイングしやすくなり、プレッシャーに負けないという安心感があります。緊張する場面になると素振りの回数が増えたり、構えてから何度も目標を見ると、いつもと違うリズム、動きになりがちです。
アマチュアの方でいうと、ベストスコア更新だったり、100切りやハーフ30台が見えてきたときに緊張感が生まれると思います。そういう状況でも、普段通りのスイングがしやすくなるので、取り入れてみてください。
それから打つ前に体のどこかを動かしておくと、テークバックがスムーズに行えます。アドレスでピタッと止まってから動き出すのは、プロでも難しいモノです。アドレスに入ってから両足をパタパタさせる選手は多く見ますが、それも同じことです。ピタッとアドレスで制ししているように見えても、どこかが動いているものです。一番細かいところでいえば、グリップした右手の親指を上下に動かしているプロもいました。小さい部分でもどこかが動ているだけでも全然違います。
練習場では何回もボールを打てますが、コースに出るとその状況で打てるのは1回だけです。ちょっとした工夫をすることでその成功率も高くなると思います。
ティアップしてからボールを打つまでの動作、いわゆるプレショットルーティンは、毎回同じにすると、緊張した場面でもいつも通りのリズムでスイングしやすくなる。森田プロは①~④の動作を基本としている。
【1】
ティアップする位置を決めてティを刺す
【2】
ボールの横で2回素振りをする
【3】
ボールの後ろから目標を定めてボールの近くに目印を作る
【4】
4歩でボールの横に移動して、両足を揃えた状態でヘッドを真っすぐ合わせて、目標を確認して足を広げて構える
森田理香子プロフィール
もりた・りかこ/1990年1月8日生まれ、京都府出身。ツアー通算7勝。2008年にプロ入入り。10年の「樋口久子IDC大塚家具レディス」でツアー初優勝。13年には年間4勝を挙げ、23歳で賞金女王に輝いた。18年を最後にツアーから撤退し、現在はゴルフウェアのプロデュースや、ゴルフ中継の解説などで活躍している。スイングの動きを見直したら、ドライバーの飛距離は現役時代より10ヤード伸びたという。
撮影/福田文平 取材・文/小高拓