3季ぶり12回目のシード権を獲得した藤田さいきプロ。平均飛距離は245・14ヤードと衰え知らず。今回は右に曲がるスライスボールを直す方法を教えてくれました。右曲がりを直せば、それだけでも飛距離は伸ばせます。
■こすり球を直せば飛距離は伸びます
ゴルファーの永遠の悩みの一つが、右に大きく曲がるスライスボールですね。アマチュアの方の7~8割はスライスを打っていると言われています。女性ゴルファーでも右曲がりの方は多く、スライスを直したいという声はよく聞きます。
スライスの原因は、ダウンスイングからフォロースルーにかけてのスイング軌道にあります。アウトサイドインのカット軌道でインパクト時にフェースが開いて当たるため、ボールをこするように右回転がかかります。こすり球と呼ばれるスライスは、ボールに効率よく力を伝えられていないので飛距離をロスしやすくなります。
右への曲がり幅が一定な方は目標を左に取ることで、スライスボールでもスコアメイクしやすいという考え方もあります。ただ、曲がり幅を抑えれば飛距離は伸びます。飛距離を伸ばしたいと思ったら修正する価値はありと思います。
後ろから見てダウンスイングでアウトサイド(高い位置)からクラブが下りてくるとスライスになりやすい。インサイド(低い位置)から下りてくるとボールがつかまり、スライスを防げます
■バックスイングでインに引きすぎるからカット軌道になります
カット軌道になる原因は、トップスイングからの切り返しの時に腕の力で叩きにいこうとして右肩が前に出るというものがあります。ですがこれは腕力の強い男性に多いです。男性に比べて非力な女性は、バックスイングの上げ方にその原因があります。
長年スライスに悩む方は、カット軌道を直そうという意識があるのでしょう。バックスイングでクラブを低く、極端にインサイドに引きいている方が多いです。これはダウンスイングでインサイドからクラブを下ろす意識の表れだと思います。しかし、これが勘違いなのです。体の構造上、極端にインサイドに上げたクラブは、トップスイングからダウンスイングにかけて腕が上に上がり、八の字を描くようにクラブはアウトサイドから下りてきます。ダウンスイングでインサイドから入れたいから、バックスイングもインサイドに引くという考えは間違いなのです。
バックスイングを極端にインサイドに引くと、八の字を描くようにダウンスイングはアウトサイドから下りてきてしまいます。これがカット軌道の原因です。
■手元を右肩に上げる感覚でインから下せる
スライスを直したくてインサイドからクラブを下ろしたい人は逆の発想で、バックスイングでアウトサイドに上げてみましょう。先ほどと逆の現象で、トップスイングでループして、腕が下がってダウンスイングは、インサイドからクラブが下りてくるようになります。
最初はなかなかできないと思うので極端にやってください。構えたら体は動かさずに、両ヒジを曲げて手元を右肩に向けて上げて、クラブを担ぐ形を作ります。クラブはほぼ真上に上げるイメージです。その体勢から肩を90度回すとトップスイングの形になります。そして手先は動かさずに捩じった体を戻すことで、クラブは自然とインサイドから下りてきます。最初はこのドリルを繰り返し行って、インサイドから下す感覚をつかんでください。
実際のスイングでは、右ヒザが動かないように右足太モモの内側に力を入れてスエーを防ぎながら体を回して始動します。体の回転と合わせて、クラブを真上に上げる感覚だとトップスイングはいい位置に収まります。そして左足を踏み込むように下半身始動で切り返せば軌道は変えられます。
インサイドからクラブを下ろせるようになったら、最初は右に打ち出しと思いますが、これで正解です。あとはリストターンのタイミングを合わせることで、スライスの幅を抑えたり、ストレートからフック系のボールが打てるように変わっていきます。
ちなみにプロや上級者は、スライスボールを“つかまっていない”という表現をします。スライスと同じ右に曲がるフェードでも、しっかりボールはつかまっています。ボールがつかまっていれば飛距離は伸びますし、高さも出ます。またアイアンではスピン量が増えるのでグリーン上で狙ったところに止められます。ボールをつかまえるためには、ダウンスイングでインサイドからクラブを入れなければなりません。インサイドからクラブを下ろすことがスコアアップの近道です。
カット軌道を直すドリル
構えたら体を回さずに手元を右肩に向かって上げる。そして肩を90度回すとトップの形になる。そのまま手先を使わずに体を戻すとインサイドから下りてくる
教えてくれたのは…藤田さいきプロ
ふじた・さいき/1985年11月22日生まれ、栃木県出身。ツアー通算5勝。2004年プロ転向。05年にツアーデビューし、06年から12年連続でシード保持。20―21シーズンは賞金ランキング28位で3季ぶりにシード復帰。ツアーでの平均飛距離は、36歳にして245・14ヤードで15位と飛距離は健在。2022年は11年ぶりの優勝を目指す。チェリーゴルフ所属。
撮影/村上悦子 取材・文/小高拓 取材協力/鶴カントリークラブ(栃木県)