こんにちは。ハウスキャディ歴●年のB子です。先日、7番ホールのティイングエリアで前が空くのを待っていた時のことです。隣接する6番ホールの方向で「カンッ!」という何かが跳ねる音がした直後「ガンッ!」とカートから凄い音が。付近にボールが転がっていたので、後続組の打ったボールがカート道で跳ねて突っ込んできたようです。もしカートが無ければ、うちの組のお客様に当たって大惨事になっていたかもしれません。
ミスショットによる打ち込みは仕方がないとしても、問題なのは「ファー!」の声が聞こえなかったこと。皆さん、「ファー!」をしっかり言えていますか?
◆「ファー」の意味
そもそも、「ファー」にはどういう意味があるのでしょう。「ファー」の語源は「fore」。「前方」とか「前部」という意味があり、本来の発音は「ファー」ではなく「フォア」ということになります。海外のゴルフ中継などを見ていると、「フォア! フォア!」と短く何度かに分けて声掛けしていますね。
「ファー」の声掛けは、打った球が大きく曲がってしまった時や、誰かに危険を知らせるものということはゴルファーにとって常識。ところが、セルフプレーが増えた昨今、ゴルフ場で聞こえるファーの声がかなり減っています。大きい声を出すのが恥ずかしいのか、「誰かが言ったら自分も言う」というスタンスの人も多く、驚いて声が出なかったなんて言い訳をするお客様も。しかし、事故が起きてからでは遅いのです。
◆「ファー」を言うタイミング
キャディをしていて「ファー!」の声掛けをした際に、「そんなに曲がって無いでしょ」と不満を漏らすお客様が結構います。つまり、本当に危ない状況でしかファーを言わないお客様が多いということ。しかし、打球事故は思わぬ状況で起こります。
ボールが木やカート道に当たり、思わぬ方向に跳ねて隣のホールへ……そんな状況がありますよね。「前に人がいて危ないからファーを言う」というのでは、全く足りません。ボールが林の方向に飛んで行った場合、もしかしたらそこに人が隠れているかもしれない。ボールが木に当たって、人のいる方向に飛んでいってしまうかもしれない。飛球線に向こう側が見えない場所があるとき、木などの障害物がある方向に飛んで行った時、そこにもしかしたら人がいるかもしれません。
ボールが飛んで行った方向がまだそのホール内だとしても、そこに人がいる可能性がゼロではない場合には、念のための「ファー」を言えるようにしましょう。念のためで言った「ファー」が、打球事故を防いでくれるかもしれません。
◆「ファー」の言い方
「ファー」を言うときは、必ずどちらの方向にボールが行ってしまったのか示しましょう。右に行ったなら右腕を、左に行ったなら左腕を斜め上に上げ、ファーの声を聞いた人がどちらにボールが行ったのか判別しやすいようにします。
隣接するホールが無い場合や、誰もいなそうに見えるという場合に、大きな声を出すことを躊躇してしまう人もいるでしょう。そういった時には、プロのキャディさん達が使うように、短く「フォア!」と声を出すだけでも注意喚起になります。
◆ もしファーが聞こえたら…
どこかで「ファー」が聞こえたら、まずは両手で頭を守ります。座り込むなどせず、すぐに逃げられるような体勢を取ります。近くにカートや隠れる場所などあれば、すぐに隠れましょう。隠れる場所がない時は、「ファー」が聞こえた方向を見て、ボールがどちらに向かっているのか確認します。それが自分の方向であれば、頭を守ったまま耳を澄ましてボールが視認できるまで待ちましょう。
ボールは、直撃も怖いですが、どこかにバウンドして自分に向かってくることもあります。木の上でしばらくバウンドしてから落ちてくることもあります。ボールが確認できるまで、気を抜かないようにしましょう。
◆自分が打った球が起こした事故は自分に責任がある
「ファー」の声掛けは、打った本人が責任を持ってしなければなりません。一緒にまわっている人が、必ずしも全てのショットを見ていてくれるとは限らないからということもありますが、打球事故が起きてしまった際には打った人の責任が問われるからです。
「ファー」を言ったかどうかで損害賠償の内容が大きく変わってしまうほど、「ファー」の声掛けは重要なこと。恥ずかしがっている場合ではありません。
最悪の場合、死に繋がる可能性もある打球事故。事故を起こしてから後悔しても遅いのです。自分が打った球が起こした事故は自分に責任があるということを知り、しっかりと「ファー」を言えるようにしましょう!
◆キャディのB子 プロフィール
キャディのB子/あるゴルフ場のアルバイトキャディ。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、大学のゴルフサークルに所属。就職活動に失敗し、ハウスキャディのアルバイトをして就職先を探すはずが、キャディが天職と気づく。シャンクが一番の敵。