ゴルフスタイルは人それぞれ。スコアを追求したり、雄大な自然に癒されたり、ファッションを楽しんだりと、世代や性別を問わずに楽しめるのがゴルフの魅力です。なかには「にぎる」という方法でラウンドを楽しむゴルファーもいます。「にぎる」とは、いったいどのようなことを意味するのかご存じでしょうか? もし「にぎりませんか?」という誘いに軽く乗ってしまえば、大変なことになるかもしれません。
◆にぎる=「賭けゴルフ」のこと!
「にぎる」とは、スコアや距離など独自のルールを設けて「賭け事をする」ことです。勝負事で金品などを賭けるときの隠語で、ゴルフなどのスポーツで使われることが多い用語です。「にぎりましょうか?」「いいですね」のように使われ「賭けゴルフに承諾する=握手をする=にぎる」が語源となっているようです。
賭けの対象を何にするかは人それぞれで、お金以外にも昼食やドリンクを賭けて競い合う人など様々です。「にぎり」ではバブル前は飴やチョコレート、たばこなど品物を賭けてスコアを競うことが多かったものの、バブル後はお金に変化し数百円から数万円にまでなる場合も。
「ゴルフでお小遣い稼ぎになる」とにぎりを楽しみにしているゴルファーもいますが、これって法的に問題ないのでしょうか?
◆にぎりは賭博罪? 元警察官に話を聞いた
「にぎりはゲームの延長」として軽く考えているプレーヤーもいますが、法律上はどのような扱いになるのか、元千葉県警察官で18年の勤務経験を持つ最上氏に話を聞いてみました。
「賭けゴルフは法律からすると、刑法第185条の単純賭博罪にあたると考えられます。単純賭博罪とは相手と少なからず偶然性のある勝負をおこない、勝者にその対価を払うことを約束しておこなう賭け事のことです」
このように、にぎりは賭博罪に当たると最上氏。知らずに行っているゴルファーも多いかもしれません。では、具体的にどのような刑になるのでしょうか?
「刑法には『賭博をしたものは、50万円以下の罰金または科料に処する』とあり、また、くり返し行われると刑法第186条第1項の常習賭博罪に該当します。『常習として賭博をした者は3年以下の懲役に処する』とされるように、懲役刑になる恐れもあるんです」
◆金銭以外を賭けた場合も違法になる?
では、お金を賭けなければ罪に問われることはないのでしょうか?
「刑法第185条には『一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない』と記されているため、チョコレートや飴を賭けた場合はセーフと考える人もいます。また、金額の小さい茶店の飲み物やランチ程度なら問題にならないという人も。しかし金銭以外を賭けた場合でも、違法になる可能性はあるので注意しましょう。金銭を賭けた場合は少額でも違法です」
『仲間内だから、バレなければ大丈夫』『このくらいの金額なら問題ないよ』という人が同伴者にいたとしても、いっときの楽しみで行った行為が大きな代償を払うことになりかねません。著名人の賭けゴルフ疑惑が度々報道されるように、にぎりは誘われてもやらないほうが無難ということですね。
◆にぎりを持ちかけられたらどうする? 断り文句はコレ!
「にぎりましょう」という誘いは、女性グループでは聞かれることはあまりありません。昭和の時代はにぎる男性が多く見られましたが、最近の若いゴルファーの間ではほとんど聞かれなくなりました。にぎりをやりたいという人は「遊びの中にも緊張感が出る」「ゲーム性が増し、楽しめる」などの理由で誘ってきますが、現在は「賭けゴルフは違法」と認識している人が多く、誘う人を迷惑と感じる傾向にあります。
しかし、上司や目上の人から話を持ち掛けられると断りにくいものです。しぶしぶ了承している人や、断るのが苦痛でラウンド自体の誘いをお断りしている人もいるかもしれません。どのように対応すればスマートにお断りできるでしょうか? 断り文句についても、最上氏がアドバイスをくれました。
「にぎりを持ち掛けられると、その場の良い雰囲気が崩れてしまうことを恐れて断りにくいという方もいます。その場合、お互いにお金を出し合って賞品を用意することを提案してみてはいかがでしょうか」
金銭を賭けずに賞品という形式にすれば、賭博罪には抵触せず安心ということですね。あらかじめ賞品を用意できなくても、ショップで販売しているボールやマーカーなどをセレクトすれば、ゲーム性を保ちながら法に反する不安なくラウンドを楽しめます。
にぎりは金銭を賭けると少額でも違法です。かといって話を持ちかけられたら断りづらいもの。「にぎり」のワードが出たら「お金ではなく賞品にしませんか?」と声をかけ、もらってうれしいゴルフグッズを賭けて、楽しく競い合いましょう。
取材・文/夢書房