そもそも、プロゴルファーはなぜ“プロキャディ”を雇うの?

ゴルフ場を知り尽くしている存在と言えば、ハウスキャディさん。それなのに、プロゴルフトーナメントでは、なぜハウスキャディではなく“プロキャディ”を雇うゴルファーが多いの? そんな疑問を持つ方も多いでしょう。

「ゴルフ場を知り尽くしているハウスキャディの方が、確かな情報をくれるんじゃない?」と思いますよね。そもそも、初めて開催されるコースでプロキャディがコースチェックをする際、ハウスキャディからも様々な情報をもらっています。グリーンの芝目、そのコースの癖、独特な風の入る位置。コースについての情報量は、ハウスキャディの方が多く持っているのは当然です。

では、なぜ、プロゴルファーはプロキャディを雇うのか。プロキャディが選ばれる理由は、コースを知っていること以上に必要とする「何か」を彼らが持っているからです。その「何か」とは。マネジメントに関する情報の伝え方だったり、単純に話しやすさであったり、安心感であったり……それはもちろん選手によって様々です。

ハウスキャディが付いてくれるとは限らない!エントリーの事情

プロがトーナメントにエントリーする際、キャディについての項目は帯同キャディを「連れて来る」か「来ない」か、だけ。つまり、ハウスキャディを希望していたとしても、本当にハウスキャディが付いてくれるかどうかは会場に行ってみなければわかりません。

プロキャディがまだそれほどいない頃など、あまりにもキャディが足りなくて、全くゴルフを知らない吹奏楽部の学生がキャディを務めたなんてこともありました。同組の選手に迷惑をかけてしまうことも多く、プレーに集中できない、なんていう状況に陥りかねないのです。

それならば、帯同のキャディを連れて行った方が良い。かといって、1週間という時間を縛ってしまうことになり、しかもそれを毎週探すとなるとなかなか難しい。トーナメントならではなことも多々あり、それらを熟知しているプロキャディならば安心して任せられる。おそらく最初はそんな理由から、プロキャディという存在が必要とされるようになったのだと思います。

単純にピンまでの距離だけでも、エッジまでの距離、エッジからのピンまでの距離、ピン奥の距離、バンカー越えの距離、バンカーからエッジまでの距離、段の上までの距離など、欲しい情報は状況によって様々あって、必要な情報だけを抜き取って選手に伝えなければなりません。プロキャディであれば、そういったことはできて当たり前なので、安心を買うという意味で必要とされているのは間違いないでしょう。

プロゴルファーとプロキャディの関係性や、雇用形態は?

さて、そんなプロキャディの雇用について。ずっと同じキャディをつけている選手もいますが、数年ごとに替える選手もいるし、試合ごとに替えるという選手もいます。

プロとプロキャディの関係性は、人によって本当に様々。友達のように和気あいあいとした関係もあれば、ビジネスとして距離感を保ったままの関係もあります。常に緊張状態が続くようなツアー生活の中で、選手にとってキャディが数少ない心の拠り所となることもあるかもしれません。

しかし、プロとキャディも結局のところ人間同士の関わり合いなので、どうしても「相性」の問題は生じます。ずっと同じキャディを使った方が、癖を分かってもらえるから良いという場合もあれば、お互いに甘えの部分が出やすいからといった理由で、試合ごとにキャディを変更するというのもよくあること。

プロがキャディに求めることがそれぞれ違うからこそ、多様な雇用形態があり、それに合わせるかのように個性溢れるプロキャディ達がいるのです。

プロキャディの数は年々増えているとはいえ、まだ足りていません。「プロキャディになるためにはどうしたらいいですか?」という質問を今までに何度か受けたことがありますが、そういった講座があるわけでも無く、自ら経験して学んでいくしかありませんでした。

2019年には「日本プロキャディ協会」が設立されました。協会は、その育成や技術力の向上をその活動の一部としているので、これから少しずつ増えていく可能性はあります。

ファンあってこそのプロゴルファー、プロゴルファーあってこそのプロキャディ

筆者である私自身がプロキャディをしていたのは何年も前のことで、今ではきっとその知識もレベルも、選手との関係さえも違ったものになってきているのだろうと思います。でも、プロは最高のパフォーマンスを発揮するため、キャディはそれを助けるためという立場は同じ。プロゴルファーがいてこそのトーナメントであり、ファンの方がいてこそ成り立つ仕事であるというのは、今でも変わりません。

プロがプロになるためにしてきた努力に対してのリスペクトを忘れず、多くの関係者の方々によって支えられてきたトーナメントという場に感謝しつつ、これからもますます頑張って欲しいですね。

◆おだみなプロフィール

おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。

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