今季の男子ゴルフツアー賞金王争いは、中島啓太プロと金谷拓実プロ、そして蟬川泰果プロの3人による三つ巴状態がしばらく続いていました。しかし、最終戦前のカシオワールドオープンゴルフトーナメントで、中島プロが優勝。最終決戦を待つことなく、賞金王は中島啓太プロに決定しました。
そして、先週開催されたゴルフ日本シリーズJTカップ。賞金王争いが決着したにも関わらず、会場である東京よみうりカントリークラブには、多くのギャラリーが。私も、男子ツアー最後の戦いを見るため、会場に行ってきました！
◆ギャラリーの流れを変えた、KNS（金谷、中島、蝉川）
少し冷たい風が吹いてはいましたが、例年に比べれば暖かくさえ感じた最終日。最終組は、男子ゴルフツアーを牽引する石川遼プロと、今年の賞金王争いを演じた蟬川泰果プロ、中島啓太プロの3選手。ラス前（最終組の1つ前の組）には、同じく賞金王争いに華を添えた金谷拓実プロ。そんな2組は、朝から大ギャラリーを引き連れてスタートしていきました。
大会の名物ショートホールである最終18番グリーンの周りには、トップの組でさえまだまだ上がってこないような時間から、多くのギャラリーが良い場所で観戦するために陣取っていました。ハーフターンで戻ってくる最終組を待ちながら、少し高台にあるギャラリープラザ脇で9番ホールを見下ろしていたのですが、ハーフターンを終える頃には、クラブハウス周辺はギャラリーで溢れ、歩くのも人の流れに任せるしかないような状況になっていました。
私自身も、日本シリーズJTカップと、同コースで開催されたサロンパスワールドレディストーナメントでキャディをしたことがあるのですが、ホール間を繋ぐ道が狭く、選手がパターを終えた後にカップにピンを戻していると、次のティショットに間に合わないなんていう状況が起こりがちな場所が多く存在します。それはギャラリーにとっても同じことで、早く移動を始めないと次のホールのティショットに間に合わない……そんな焦りからか、全ての選手のホールアウトを待たずに移動してしまうギャラリーがどうしても多くなります。
9番ホール、石川プロが先にパーパットを決めてホールアウトすると、まだ中島プロのパットが残っているにも関わらず、次のホールの良い場所を確保しようとたくさんのギャラリーが移動し始めました。石川プロのプレーを中心にギャラリーが移動してしまうのは、この大会に関わらずよくあること。それが仕方の無いことなのもわかっていますが、それを嫌がって「一緒に回りたくない」と思う選手もいるほどです。
ところが、その後何ホールか観戦していてあることに気が付きました。今までは、いつだって石川プロを中心に起きていたそういった状況。ところが今回は、中島プロや蝉川プロを見たくて動いてしまうギャラリーが石川プロのプレーを妨げるような状況も何度か見受けられました。
石川プロのデビュー以来、当たり前のように起きていた現象が変わりつつある…そんな状況に、新しい時代の到来を感じずにはいられませんでした！
◆AON時代、再来⁉ ゴルフは三つ巴が盛り上がる⁉
日本の男子ゴルフツアーの最盛期と言っても過言では無い「AON時代」。青木功プロ（A）、尾崎将司プロ（O）、中嶋常幸プロ（N）の3選手がツアーを引っ張っていた、そんな時代があります。「藍ちゃんフィーバー」と言われた宮里藍プロの時代には、横峯さくらプロ、そして不動裕理プロがいました。
尾崎将司プロや宮里藍プロという大スターがいても、一人だけではどこか物足りなくて、スターの存在と同じぐらいに知られたライバルがいることで、より一層輝くのかもしれません。
今年の男子ツアーはそんな理想的な形で展開され、最終戦の大ギャラリーに繋がったのだと思います。そして大会結果は、優勝が蝉川プロ、2位に中島プロと金谷プロ。まさに、今年を象徴するような結果となりました。
男子ツアーの来季のシード獲得者の平均年齢は、30.576歳。年々下がり続けていましたが、今年は一気に下がり（昨年は32.015歳）、いよいよ若い世代の台頭が本格化！ 男子ツアーは、新しい時代に突入したと言って良いでしょう。
男子ゴルフツアーの最終戦が終了したことで、2023年のゴルフシーズンで残すは男子ツアー、女子ツアー、シニアツアーの３つのツアーのチーム対抗戦である「Hitachi 3Tours Championship」のみ。それぞれのツアーを代表する選手達の最後の戦いに注目です。
◆おだみなプロフィール
おだみな／元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。
