専属キャディが減っている? トーナメントのキャディ事情

大きなキャディバッグを担ぎ、プロの横を歩く。プロに助言ができる唯一の存在である「キャディ」。中でも、トーナメントを専門としている「プロキャディ」は、年々その存在感を増しています。

今月末の開幕に向けて、もう既にキャディが決まっているという選手が多いようですが、近年その雇用状況が変わりつつあります。その大きな要因として挙げられるのは、「Aプロと言えばBキャディ」といったように、ひとりのキャディをずっと使い続けるプロが減り、「今週はBキャディで来週はCキャディ」といったように、大会毎にキャディを変えているプロが増えていることです。

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◆「〇〇のキャディ」は絶滅寸前⁉

最終戦が近づくと、国内男子ツアーでは「キャディ・オブ・ザ・イヤー」の表彰式が行われます。シーズンを通して、最も功績のあったキャディに贈られる賞です。2010年頃からキャディ有志で始まったその表彰ですが、今ではメーカー、プロゴルファー、その他関係者の支援もあり、メディアでも取り上げられるようになりました。昨シーズンに選ばれたのは、賞金王に輝いた中島啓太プロの専属キャディとして活躍した島中大輔さん。(2016年以来、2度目の受賞。)ちなみに2022年は、同じくその年の賞金王、比嘉一貴プロの専属キャディだった岡本史郎さんが獲得しました。

島中大輔キャディ

ところが、島中さんも岡本さんもシーズン中その選手だけを支えていたわけではありません。トーナメントで活躍したキャディと言えば、尾崎将司プロのキャディを務めた佐野木計至さんや、賞金王賞金女王のキャディとして有名な清水重憲さんが有名ですが、「尾崎プロのキャディ」である佐野木さんのように、「〇〇プロのキャディ」と呼べるキャディが減ってきています。
とくに、女子ツアーでは「専属」と呼べるキャディはほぼいない状況で、男女両ツアーを掛け持ちしているキャディもいれば、シーズン中に5人以上のプロのキャディを務めたという人もいました。週毎で全て選手が違うというキャディも。

数名のキャディをローテーションして使っているという選手も多くなっています。昨シーズンの年間女王に輝いた山下美夢有プロのキャディは、主に二人のキャディが交代で務めていました。岩井明愛プロ・千怜プロは、ひとりのプロキャディを何週かごとに交代で使っていて、それぞれ空いている週は違うキャディを使うという形をとっていましたね。

◆専属キャディを持たないことのメリット、デメリット

【メリット】

・様々な考え方や知識に触れることができる
・ビジネスの関係として距離感を保てる
・合わないと思ったときに離れやすい

【デメリット】

・毎週探すという手間がかかる
・情報が大事になるため、選手側もキャディ側も評判や噂が広まりやすい。

キャディ側からは、「悪い癖などが把握できないためアドバイスが一片的なものになりがち」「一緒に課題をこなしていくという一体感のようなものは生まれにくい」「スポンサーを探しにくい」など、デメリットな意見が。その週さえ良ければ良いと表面的な業務に留まり、キャディのレベルが下がることも懸念されていました。噂が広まりやすいため、キャディを探している、選手を探している、そんな状況でも評判が先行してしまい、マッチングしにくくなっているとも言います。

選手側からも、専属でキャディをやってもらいたいが、スポットで依頼している選手が多く、良いなと思うキャディがいても空いている週がまばらであることに困惑しているという意見がありました。

◆「脱・専属」によるスキルアップ

それでも、専属キャディを持たない流れが主流になっているということは、それぞれにメリットがあるからと考えられます。長年コンビを組んでいると喧嘩別れをしてしまうケースもあり、距離感の問題はとくに大きいように感じました。

評判が気になって、毎週気が抜けないと考える人も多いでしょう。それは、キャディにとってだけでなく、選手にとっても同じこと。評判の悪いキャディは淘汰され、好かれない選手はキャディがいなくなる。それは、至極当然のことと言えるでしょう。キャディとしてのスキルも、キャディを使うスキルも、「脱・専属」によって向上しているのかもしれません。

今月末、いよいよ国内女子ツアーが開幕します。ぜひ、キャディにも注目して見てください!

◆おだみなプロフィール

おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。

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