世界最高峰の大会であるマスターズが終了! ワールドランキング1位のスコッティ・シェフラーが非常に安定したプレーを見せて、2位に4打差、2年ぶり2度目の優勝を果たしました。マスターズを見ていると、思わず溜息が出てしまうようなミラクルプレーのオンパレードですね。硬くて速いグリーンにピンポイントで載せていくショットや、的確なマネジメント、そして柔らかいアプローチ。感動のショットやパットが溢れる中で、やはりなんといっても一番驚きなのは、その飛距離! 16番ショートホールでは、176ヤードの距離を9番アイアンで乗せてくる選手も。ドライバーの平均飛距離も、年々伸びていますね。
国内のプロツアーでも、明らかにその飛距離が伸びているのを感じます。それがわかる指標となるのが「ドライビングディスタンス」です。
◆ドライビングディスタンスとは?
ドライビングディスタンスとは、ティショットの平均飛距離のこと。風による影響を考慮して、アゲンストとフォローのどちらでも測ることができるように、平行する2つのホールを使って計測します。計測に使われるホールには、ボランティアや学生のアルバイトスタッフが配置されていて、選手がティショットが終えセカンド地点に移動してくるまでの間に、その飛距離の計測を行います。
ドライビングディスタンス(2023年)
【女子】
順位 | 名前 | 平均飛距離 | 計測数 |
---|---|---|---|
1 | 神谷そら | 260.82 | 173 |
2 | 竹田麗央 | 258.91 | 201 |
3 | 櫻井心那 | 258.59 | 208 |
4 | 穴井詩 | 258.53 | 199 |
5 | 岩井明愛 | 257.88 | 198 |
6 | 荒川怜郁 | 257.41 | 112 |
7 | 渡邉彩香 | 256.45 | 141 |
8 | 原英莉花 | 255.21 | 114 |
9 | 川岸史果 | 254.16 | 214 |
10 | 佐藤心結 | 253.92 | 172 |
【男子】
順位 | 名前 | 平均飛距離 |
---|---|---|
1 | 河本力 | 322.58 |
2 | 杉原大河 | 312.99 |
3 | 伴真太郎 | 310.88 |
4 | 幡地隆寛 | 309.40 |
5 | 永野竜太郎 | 309.38 |
6 | 蟬川泰果 | 306.57 |
7 | 塚田陽亮 | 305.06 |
8 | 香妻陣一朗 | 304.63 |
9 | A・クウェイル | 304.36 |
10 | 中島啓太 | 304.15 |
計測する際、フェアウェイにあるかどうかは考慮されず、大きく曲げてしまったとしてもボールが止まった位置で測るので、ミスショットをすれば当然平均飛距離も下がることになります。プロの大会中はラフが長く設定されているので、少し曲げただけでも飛距離はかなり下がります。つまり、実際にフェアウェイに行った時の飛距離はもっと飛んでいると考えて良いです。
◆トータルドライビングとは?
ゴルフをしていれば、「飛ばせば良いってものでではない」…そんな言葉を耳にすることも多いですよね。それは、プロの世界でも同じ。そこで、飛距離と方向性を兼ね備えた選手が誰なのかが分かる「トータルドライビング」の方が重要視される傾向にあります。
トータルドライビングとは、ドライビングディスタンス(DD)とフェアウェイキープ率(FW)をポイント換算したもの。そのため、飛ぶだけでなく方向も安定していなければなりません。フェアウェイキープ率は、全組についているスコアラーがフェアウェイをキープしたかどうかチェックすることによって計算されているもの。そのため、ドライビングディスタンスの計測ホールに限ったものではなく、全ホールにおける数値となっています。
トータルドライビング(2023年)
【女子】
順位 | 氏名 | 合計ポイント | DD順位 | FW率順位 |
---|---|---|---|---|
1 | 稲見萌寧 | 49 | 32 | 17 |
2 | 申ジエ | 50 | 45 | 5 |
3 | 原英莉花 | 51 | 8 | 43 |
4 | イミニョン | 52 | 39 | 13 |
5 | 鈴木愛 | 54 | 26 | 28 |
6 | 山下美夢有 | 54 | 53 | 1 |
7 | 吉田優利 | 55 | 34 | 21 |
8 | 竹田麗央 | 58 | 2 | 56 |
9 | 阿部未悠 | 61 | 58 | 3 |
10 | 仁井優花 | 61 | 42 | 19 |
【男子】
順位 | 氏名 | 合計ポイント | DD順位 | FW率順位 |
---|---|---|---|---|
1 | 金谷拓実 | 48 | 39 | 9 |
2 | 中島啓太 | 52 | 10 | 42 |
3 | 大槻智春 | 54 | 28 | 26 |
4 | 出水田大二郎 | 55 | 26 | 29 |
5 | 安本大祐 | 56 | 25 | 31 |
6 | 蟬川泰果 | 58 | 6 | 52 |
7 | 吉田泰基 | 60 | 32 | 28 |
8 | 武藤俊憲 | 68 | 19 | 49 |
9 | 宋永漢 | 70 | 49 | 21 |
10 | S・ノリス | 71 | 18 | 53 |
ドライビングディスタンスの順位とトータルドライビングの順位では、顔ぶれがずいぶん違いますね。ドライビングディスタンスでは1位の神谷そらプロですが、フェアウェイキープ率は53.5で86位。そのため、トータルドライビングの順位は38位と落ち込んでいます。フェアウェイが狭く設定されていることも多く、飛距離があるとフェアウェイをキープすることが難しくなってしまうことも原因のひとつ。必ずしも、「飛ぶ=曲がる」と一概に言うことはできません。
◆実際、昔より飛ぶようになった?
私が本格的にキャディをしていた2000年頃の飛ばし屋の女子プロと言えば、福嶋晃子プロ。当時はドライビングディスタンス計測の実施が不規則で今のように公表されていませんが、私の記憶では260ヤードぐらいは飛ばしていたと思います。2016年のスタジオアリス女子オープンでは、43歳にして271ヤードという記録を叩き出し、若手を抑えてドライビングディスタンス賞を獲得しました。
では、今は? というと、福嶋プロ並みの飛ばし屋がたくさん出てきたという印象です。ティイングエリアからセカンド地点のバンカーまで260ヤードというホールで、ドライバーを持たない選手を頻繁に見るようになったことが今の女子ゴルフ界の全体的な飛距離が伸びていることを示していると思います。アイアンの番手も、明らかに変わってきています。ぜひ、実際に現場で見て、その飛距離の凄さを感じてほしいですね。
◆おだみなプロフィール
おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。