長年ゴルフを続けていると、「夏の方がボールが飛ぶ?」と感じることがあるかもしれません。冬は寒さで体が動きにくく、厚着が影響して飛距離が伸びにくいという理由もありますが、実はそれだけではありません。夏に飛距離が伸びる理由には、もう少し深い要因があるのです。
◆ゴワゴワ厚着の冬と軽装の夏でどれくらい飛距離が変わるの?
季節による飛距離の違いは、冬の寒さで体が動きにくく、夏は動きやすいことが大きな要因です。冬は芝が短くて打ちにくいのに対し、夏は芝がフサフサして打ちやすく、朝露や湿気で芝が重くなるためランが出にくくなります。また、軽装の夏場は動きやすく、クラブのヘッドスピードが上がりやすいことも飛距離に影響してしまうのです。ヘッドスピードが1メートル/秒上がると、約5.5ヤード飛距離が伸びると言われています。たとえば、通常ドライバーのヘッドスピードが30メートル/秒のゴルファーが、ヘッドスピードを2メートル/秒上げると、約11ヤードも飛距離が伸びる計算。つまり、夏場の方が「ボールが飛ぶ」と感じるのは、こうした理由があるからです。
しかし、服装だけが飛距離に影響するわけではありません。実は空気の状態も大きく関係しています。
◆目に見えない空気が飛距離に影響を与えている?
空気は目に見えませんが、ボールは空気抵抗を受けながら飛んでいきます。そのため、空気抵抗が小さい方がボールはよく飛びますが、この空気抵抗に影響を与えるのが気温です。冬は寒く空気が冷えて密度が高くなるため、空気抵抗が大きくなります。一方、夏は気温が高く空気が膨張するため、空気抵抗が小さくなり、ボールがより遠くまで飛ぶようになります。
具体的には、気温が3.6度上昇すると、飛距離が1ヤード伸びます。たとえば、冬の気温が5度、夏の気温が30度の場合、気温差だけで約7ヤードの飛距離差が生じてしまうのです。さらに、服装の違いによる11ヤードの差も考慮すると、合計で18ヤードもの差が出ることになります。これらの計算はあくまで参考ですが、気温が飛距離に与える影響は無視できないのです。
また、気圧が高いと空気が密集し、空気抵抗が大きくなるため、飛距離が出にくくなります。標高0メートルと標高200メートルの地点では、1ヤードの飛距離差が生じることがあります。たとえば、標高1,000メートルの軽井沢や日光などでは、約5ヤード飛距離が伸びる計算になるのです。
冗談のように聞こえるかもしれませんが、富士山の山頂でスイングした場合、計算上は約20ヤードも飛距離が伸びることになります。ただし、実際には酸素や気温などの問題もあるため、そのままスイングするのは難しいでしょう。
ちなみに、湿度が高いと空気抵抗が増して飛距離が落ちると思われがちですが、実際には湿度が飛距離に与える影響はほとんどありません。
◆夏場専用のクラブを用意して飛距離をコントロール
季節によるゴルフウェアの影響や気温の違いによって、飛距離は約10ヤード以上変化します。そのため、こだわりのあるゴルファーは、夏と冬でゴルフクラブを総入れ替えすることもあるのです。しかし、これを実行するのは簡単ではありません。まずは、ドライバーやアイアンセットを変更するのではなく、グリーンを狙うクラブを変更してみてはどうでしょうか。
たとえば、残り100〜120ヤードの距離で通常は7番ユーティリティを使っている場合、夏だと飛びすぎてしまう可能性があります。そこで、夏だけロフトが同じくらいの7番アイアンに変更してみると良いでしょう。7番アイアンなら、飛びすぎた場合でもグリーン周りに残りやすく、手前からのアプローチで対応できるため、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
季節によって服装や温度が変わることで飛距離が変わるため、冬はゴルフウェアにも注意が必要です。たとえば、肩にファスナーがあり着脱しやすいタイプのウェアを選ぶことで、動きを妨げずに暖かさを保つことができます。夏の飛距離の差を考慮し、クラブセッティングを変更することで、大きなトラブルを防止できるかもしれません。こうした小さな工夫を積み重ねていくことで、ライバルに差をつけることができるでしょう。
取材・文/夢書房