海外ツアー参戦中のプロ達を悩ませる「出場義務試合数」って何?

福岡県の芥屋ゴルフ倶楽部で開催された「Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント2024」では、今季、LIVゴルフを主戦場としている香妻陣一朗プロが優勝! トータル19アンダーで首位に並んだ小斉平優和プロとのプレーオフを制し、2年ぶりのツアー3勝目を挙げました。

香妻プロは、サウジアラビア政府系ファンドの投資によって設立された「LIVゴルフ」へ日本人で初めて参戦した選手です。今季はそちらを主戦場としているため、香妻プロにとってはこの大会が国内の4試合目ということになりました。賞金ランキングでシード権内に入ったとしても、出場試合数が足らずにその資格を失いかねないという状況の中、優勝することで来季の出場権を確保しました。

男子ツアー、女子ツアーに限らず、こういった海外ツアーと国内ツアーとを行き来する選手たちにとって、このような出場義務試合数やシード権といった問題は常につきまとってくるもの。出場義務試合って何? これに関連してたまに耳にする「罰金」とは? 簡単にまとめていきたいと思います。

香妻陣一朗プロ (Getty Images)

◆シード権とその獲得条件は?

まず、大会の出場義務が課せられるのは、シード権を持つ選手です。シード権とはツアーの出場権のことで、単年のものとそうでないものと様々あります。それらを獲得するためには、それぞれ各条件をクリアしなければなりません。例えば女子ツアーの場合、以下に該当する選手にシード権が与えられています。

【永久シード】
・国内ツアーで30勝した選手

【単年シード】
・前年度のメルセデス・ランキング上位50位までの選手
・前年度の国内ツアーで優勝した選手

【複数年シード】
〈5年シード〉
・同じ年に公式競技で2勝以上した選手
・公式競技で優勝し、その年のメルセデス・ランキング1位の選手

〈4年シード〉
・各年度のメルセデス・ランキング1位の選手

〈3年シード〉
・公式競技で優勝した選手

(公式競技とは、日本女子オープンゴルフ選手権、日本女子プロゴルフ選手権大会、ワールドレディスチャンピオンシップ、JLPGAツアーチャンピオンシップの4試合のことを言います。)

【その他】
・トーナメント特別保障制度が適用されている選手 
・国際ツアー登録していた選手が国内ツアーに復帰する場合で、その前年度末時点のロレックスランキングが30位以内の選手

◆出場義務試合数って何?

シード選手には、出場しなければならない大会数が決まっています。例えば女子ツアーの場合、単年のシード選手であれば「開催試合数の60パーセント以上」と定められていて、今年は全部で37試合なので23試合以上の出場が必要ということになります。これに違反した場合は、来季の単年シードの条件を満たしていしても、適用されません。ただし、海外ツアーの出場資格を持っている選手は、国際ツアー登録をすることでこの出場義務試合数を「開催試合数の20パーセント以上」に減らすことができます。ちなみに、生涯で300試合以上出場している選手には、出場義務はありません。つまり、藤田さいきプロや上田桃子プロ、菊地絵理香プロといった長年ツアーに出場したきた選手は免除ということになりますね。

出場義務が決められているのは、試合数だけではありません。まず、国内の大会で優勝した選手は、次年度の同じ大会にも出場しなければなりません。特別な理由なく違反した場合には、罰金が課せられます。前年度に欠場した試合を再び欠場する場合にも、同じく罰金が課せられます。(国際ツアー登録選手は除きます。)

男子ツアーの場合、女子ツアーと比べるとかなり海外ツアーへ進出しやすい規定になっています。シード選手の出場義務試合数はシーズンの半数ですが、欧米ツアーの出場資格を持っている選手に関しては、シーズン開幕前に届け出を出せば3試合に軽減されます。しかも、長期シードを持っている場合には、国内出場試合数がゼロでも維持できます。

しかし、今回の香妻プロの場合、主戦場がLIVゴルフであったため軽減措置は無く、出場義務試合数は通常通りシーズンの半数ということで12試合。残りの大会もあと10試合程度となる中、今季参戦した試合はまだ4試合で、しかもLIVゴルフの大会への参戦もまだ続くという状況の香妻プロにとって、出場試合数は既にぎりぎりでした。来季の国内のシード権を確保するには「優勝しかない」という状況の中での優勝だったというわけです。

国内ツアーの人気を維持するためか、厳しく設定されていた出場義務でしたが、ここ十数年の間にずいぶんと緩和された印象です。これからも、国内ツアーは海外志向の選手達を悩ませるものではなく、応援する立場であってほしいなぁと思います。

◆おだみなプロフィール

おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。

おすすめの関連記事