埼玉県の東京ゴルフ倶楽部で開催された、日本最強ゴルファーを決める戦いである日本オープン。日本最高峰と言われる大会は、今平周吾プロが激熱展開を制し日本オープン初優勝! これにより、2017年のツアー初優勝から7季連続優勝(歴代4位)を達成。ツアー通算10勝目となる地元での嬉しい快挙となりました。
最終日を首位で迎えた木下稜介プロと、そのひとつ前の組でまわる今平周吾プロとの一騎打ちという展開でした。最終ホールまでもつれた戦いは、20メートルはあったと言われる長いバーディパットを今平プロが決め、逆転で優勝。今平プロは、大会が開催された東京ゴルフ倶楽部がある埼玉県狭山市のお隣、入間市の出身。地元で開催された日本オープン、その優勝争いにいつも以上に気合が入っていたのか、勝負を決めるパターが決まった際には咆哮を挙げるほど。今年一番の激熱展開に、筆者である私も大興奮でした。
◆選手たちを苦しめたのはニラのようなラフ
男子の日本オープンが終了したことで、今年の全ての日本オープンが終了したことになります。千葉カントリークラブの川間コースで開催された日本シニアオープン。大利根カントリーで開催された日本女子オープン。そして、今回の東京ゴルフ倶楽部で開催された日本オープン。それら3つの大会で共通していたのは、「深いラフ」でした。
全ホールにボールを探す係がいるほど深く設定されたラフ。ボールがラフに行ってしまうと、その入り方にもよりますが、ウェッジで出すだけという状況に。特に男子の大会は「ニラのようだった」と言われるほどで、くるぶしさえも見えなくなるぐらい埋まるような深さだったそうです。それに加えて、フェアウェイは狭く、ホールによっては幅が15ヤード程しか無いような場所にティショットを打って行かなければならないホールもありました。
◆日本最高峰の大会は最難セッティング
今季の男子ツアーの今までに開催された大会を振り返ってみれば、予選カットラインはアンダーパーかそれ以上という結果がほとんど。しかし、今大会のカットラインは+8。練習ラウンドの時点から話題となっていたラフは、選手たちのプレーに大きな影響を及ぼしたことがわかります。力のある男子プロでさえ、ラフから出すだけといった状況も多く見られ、我慢、我慢、我慢…と唱えているような、そんな表情があちらでもこちらでも見られました。
日本オープンといえば、男子も女子もその年のワーストスコアになりがち。その原因は、そのコースセッティングにあります。年々向上していくプロの技術に対抗するかのように、距離を長くしたり、ピンポジションを厳しい位置にしたりなどして難しくするのは当たり前のこと。しかし、アメリカのPGAツアーでは総距離が8000ヤードを超えるようなコースもあるほど距離が伸びているのに対して、日本のツアーはその総距離が未だ7000ヤード前後というコースがまだまだ多くあります。これ以上距離を伸ばすことも難しく、せっかく選手の飛距離が伸びてきてもそれに対応できません。
今回の東京ゴルフ倶楽部も、その総距離は7251ヤード。セカンド地点のバンカーも軽々超えてしまうため、飛距離と方向性をシビアに求められる状況を作るにはラフを伸ばせるだけ伸ばしてフェアウェイを狭くするしかありません。それにより、飛距離よりも針に糸を通すような繊細なショットが求められ、選手によってはドライバーをセッティングから外すことも選択肢になるような、そんな状況となりました。そのお陰か、飛距離ばかりに目がいってしまいがちな男子プロのプレーですが、今回はその細やかな技術面にも目が向けられたような気がします。チャンスについたパットは何が何でも沈めなければ凌げない…、そんな状況だった今大会。今平プロの最終ホールの圧巻のバーディも、この大会ならではの締めくくりだったと言えるのではないでしょうか。
それぞれの日本オープンが終わると、ツアーもいよいよ佳境。王者、女王が決まる最終戦が近づいてきました。女子は、竹田麗央プロの独走状態でしたが、3年連続女王がかかる山下美夢有プロが優勝したことで待ったをかけた状態。男子はまだ誰が頂点に立ってもおかしくない混戦模様となっています。まだまだ目が離せない国内の男女両ツアーに、これからも注目していきます。
◆おだみなプロフィール
おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。