稲見萌寧さんが銀メダルを獲得するなど、ゴルフファンもおおいに盛り上がった東京五輪が終わり、8月24日からは東京パラリンピックが始まりました。
残念ながら、パラリンピックの種目にゴルフはまだありません。けれども、ゴルフを五輪種目にするためにできた国際ゴルフ連盟(IGF:インターナショナル・ゴルフ・フェデレーション)の組織の目的のひとつには、『ゴルフをオリンピックおよびパラリンピックスポーツとしてプロモートをすること』とハッキリ書かれています。
現在、IGF会長になっているアニカ・ソレンスタムはもちろん、ジャック・二クラウスやタイガー・ウッズ、日本では樋口久子さんなどが働きかけた結果、ゴルフが112年ぶりに五輪の種目になったのが2016年のリオ・デジャネイロ大会。東京大会はこれに続いてのものでした。オリンピックの種目には入れ替わりがありますが、少なくとも次のパリ大会(2024年)まで、ゴルフが行われることは決まっています。
パラリンピックの種目になるにも、オリンピック同様競争が激しいようです。でも2024年のパラリンピック種目になることを希望している8つのスポーツのうちのひとつに、ゴルフは入っています。IGFも2016年には国際パラリンピック委員会(IPC)のメンバーとなっています。
障がいの程度によるクラス分けや、ルールの整備など、パラリンピックでゴルフ競技が見られるようになるまでにはまだハードルはあるかもしれませんが、ゴルフはパラスポーツに向いていると思います。
競技はさておき、障がいを持つ方々がプレーするうえで、ゴルフは比較的敷居が低いスポーツだと思います。ティーインググラウンドを選び、ハンディキャップを使うことで年齢や体力、筋力に応じて老若男女が一緒にできるスポーツだからです。また、コンタクトスポーツではないので、ケガを恐れる必要があまりありません。カートを使うことで、たくさん歩くことが厳しい方でもプレーできます。
屋外競技で自然と触れ合えるとことも大きな意味を持っています。肉体的であれ精神的であれ、障がいがあることで外に出なくなってしまうという人も少なくない中、ゴルフをすることで外に出るようになって気持ちが明るくなり、救われたと言う方もたくさんいるそうです。
それだけではありません。ゴルフは、色々な人と一緒に楽しむことができるスポーツです。プロの競技でも、ボールを打っている時以外には一緒にプレーしている人と話をすることもあります。ゴルフの話のこともありますが、全く関係ない話題であることも多い。ゴルフをすることで世界が広がっていくのです。スポーツとして楽しむ以外に、人と人とのつながりが増え、可能性が広がる、と言い換えてもいいでしょう。
実は、私たちの身近にも障がい者ゴルフのプレーヤーがいます。ツアーキャディーの一人なのですが、事故で右手に障がいを負った方です。元々、ゴルフをやっていた人なので、障がい者ゴルフの世界でも夢を追っていると聞きました。
スポーツの素晴らしさは、パラスポーツでも変わることはありません。いえ、パラスポーツだからこそ感じられる素晴らしさがあるはずです。すでに日本や欧米などを中心に、世界大会も行われているようですので、近い将来、パラリンピックの舞台で、素晴らしいプレーが見られるのを楽しみにしたいものです。
取材・文/小川淳子 写真/Getty Images