紅葉前線が南下してくる美しい季節。みなさんいかがお過ごしですか。佐伯三貴です。秋の深まりとともに、ツアーも大詰めに入ってきました。毎試合が激戦で、タイトル争いからも目が離せません。そんな中ですが、今回は少し視点を変えて新しい顔ぶれについて触れてみたいと思います。
◆いま、最も注目すべきニューフェイスは…
昨年のプロテストがコロナ禍で延期となり、今年6月に新たに22人の日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会員が誕生しました。
その中で私が注目しているのは、岩井明愛(あきえ)さん、千怜(ちさと)さんの岩井ツインズ。アマチュア時代から注目されていた双子のことは、テレビでキレのあるスイングが目につきました。「プロになったらすぐにでも活躍しそうだな」。そう思っていたら、案の定、下部ツアーのステップアップでまずは妹の千怜さんが優勝(カストロールレディス=9月)。この試合4位タイだった明愛さんが、続く山陽新聞レディースで勝っています。そろって実力があるのはもちろんですが、一人が勝つとすぐもう一人が勝つ、というような双子ならではの感覚も楽しみだな、と思っています。
◆プロ時代の目標設定
2人に限ったことではありませんが、最近の若い選手たちは目標設定が高く、しかもプロセスをうまく追っているように見受けられます。プロテスト→ステップアップツアー→優勝→レギュラーツアー→優勝→複数回優勝→賞金女王と言うように。
その先に海外ツアーがある選手もいれば、永久シードを見据えている人もいる。人生設計をきちんと描いて、それに向かって努力することが、ごく当たり前にできている人が多い気がします。
私の場合は、プロ入り以来毎年「前の年の自分を超えること」を目標にプレーしていました。でも、それ以上にコーチ(坂詰和久氏)が、でかい目標を掲げてくれていたので(笑)、無意識にそこに向かっていた部分もあったと思います。
前の年の自分を超えるために色々と新しいことも試していました。新しい理論、新しい練習法、新しいトレーニング、新しいクラブ……。自分に合えば取り入れるけれども、合わなければやめて次のものを試す。この切り替えが難しいという人も意外に多いのですが、私は柔軟に対応できるタイプでした。
まぁ、何があっても「死にゃーせん」と思っていたので、いわゆる”保険“を掛けることもなく、腹をくくってゴルフをしていたのも事実です。
◆黄金世代のあの選手にも要注目!
私の話はさておいて、岩井ツインズよりは先輩ですが、もう一人注目していた選手が植竹希望さんです。1998年生まれのいわゆる“黄金世代”。渋野日向子さんや勝みなみさん、小祝さくらさんなどと同じ学年ですが、今のところ優勝経験はありません。それどころか、QT48位と昨年の初めは出場できる試合も限られていました。
けれども、その中で確実に結果を出すことができたのは、ツアー4位(74.0930%)の正確なアイアンショットがあったからでしょう。今年に入ってトップ10入りが6回。中でも、住友生命Vitalityレディス東海クラシックでは、爆発的なスコアで追い上げた西村優菜さんと最後まで優勝争いを演じたことが記憶に残っています。
5組前にホールアウトしたクラブハウスリーダーの西村さんと同じ通算10アンダーで迎えた最終18番。ティーショットを左の池に入れてしまってダブルボギーを叩き、2位に終わった悔しい経験をしています。
植竹さんに注目したのは、昨年のステップアップツアーで見たことがきっかけでした。私が教えている一人、沖せいらと優勝争いをしていたからです。沖が勝ったのですが「この子うまいなぁ」と感じたことをよく覚えています。腹をくくってアグレッシブに攻めていくところなど、昔の私を見ているようでした。
その後、今年の日本女子プロゴルフ選手権で4位となり、その後が先ほど書いた惜敗。それでも、賞金もすでに5500万円以上稼いでいてランキング31位なので、初シードも確実。これからがとても楽しみです。今となっては「活躍してるから言ってるんじゃないの?」と言われそうですが(笑)、もう少し早くから見ていました。
コロナ禍で岩井ツインズたちは変則的な時期のプロテストを受けることになりましたが、今年はもう1回、本来の2021年のテストがこれから行われます。11月2~5日の4日間で会場は城陽カントリー倶楽部(京都府)。72ホールをプレーして、20位タイまでが合格。JLPGA会員となることができます。ツアーに出場するにはQTで上位に入る必要がありますが、まずはプロテスト。それが現在、辿らなければならない道となっています。
岩井ツインズたちと一緒に合格したルーキーたちと、11月のプロテストで誕生するさらなるルーキー。来年のツアーにフレッシュな顔ぶれがどれだけ増えるのか。みなさんとともに見ていきたいと思います。
取材・文/小川淳子 写真/Getty Images