あけましておめでとうございます。佐伯三貴です。本年もゴルフに関する様々な話を皆さんにお届けしたいと思います。どうぞお付き合いください。
今回は松山英樹プロについてお話したいと思います。7歳半年下の松山プロは、東北福祉大学ゴルフ部の後輩にあたります。彼が学生の頃は、普通に「松山くん」と呼んでいたのですが、卒業した後はいつの間にか「坊ちゃん」と呼ぶようになりました。以前にもお話ししたと思いますが、雰囲気ですよ、雰囲気。「ヒデキさん」は変だし、呼び捨てもちょっと・・・と思ったら自然に個々に落ち着いたんです。まぁ「坊ちゃん」なんて呼ぶのは私だけですが笑。ちなみに“坊ちゃん”は私のことを普通に「三貴さん」と呼びます。
2021年は彼にとって大きな飛躍の年となりました。4月にはマスターズで堂々の優勝を飾りました。2010年アジアアマ(当時。源アジアパシフィックアマ)に優勝して初めて出場したマスターズでローアマを獲得。3月11日の東日本大震災で母校のある東北地方を含めた被災地に勇気を与えてくれたことに、世界中の人たちが感動しました。
これが大きなステップとなって世界に羽ばたいた”坊ちゃん”は、米ツアーの”顔”の一人となりました。優勝を重ね、メジャーでも何度も優勝争い。それがついに優勝という結果につながったのが、初出場から数えて10回目となる昨年のマスターズだったのです。
東京オリンピックでは、プレーオフで銅メダルを争いましたが残念ながら敗退。メダルには手が届きませんでした。けれども、その前に新型コロナウイルスに感染し、全英オープン欠場を余儀なくされた後だったことを考えれば大健闘といえるでしょう。
秋には日本で開催された米ツアー、ZOZO Championshipで優勝。日本のファンの前でメジャー王者としての勇姿を見せてくれたのも記憶に新しいですね。
彼は本当にいい意味でずっと変わりません。メジャー王者となっても、以前のまま。「でかくなったな~」とは思いますが、それ以外は本当にずっと同じです。
どう変わらないかというと、ゴルフへの欲だけはものすごく強いのですが、お金をいくら稼いでも変わらないところ。先輩はしっかり立ててくれるし、他にはあまりこだわらないようです。
“坊ちゃん”がすごいのは、同じことをずっとやり続けることができることです。例えば片手でのアプローチ練習のような地味な練習をひたすらずっと続けられるのです。
プロゴルファーは誰でも、常に自分と向き合い、色々なことを考えています。それでも自分に100点をつけられることは、ゴルフ人生の中でないと言ってもいいでしょう。その中でも“坊ちゃん”は、ずっとスイングについて考え続けることができるのです。他からの情報をインプットすることもあるでしょうけれども、それに振り回されることがありません。
しっかりと自分を持って、細かく地味なことを同じように黙々と続けていける。ゴルフへの強い欲があるからこそだと思いますが、この続ける才能こそが“坊ちゃん”松山英樹の強さの秘密なのでしょう。
2021年についても少し話していましたが、マスターズ優勝はもちろん大きかったようですが、ZOZO Championshipでの優勝もものすごくうれしかったようです。母国の日本で、たくさんのギャラリーの前で米ツアーに優勝できたからでしょう。
全米女子オープンで笹生優花さんが優勝したことにも刺激を受けたようです。その分、他のメジャーに対する気持ちも強くなったことを感じました。私が見る限り、他のメジャーでも優勝できる力は十分にあると思います。そうそう。ほかのメジャーで勝つと、カップでお酒を飲めるので、それをしてみたいとも言っていましたね。
確かに、マスターズは有名なグリーンジャケットのほかにトロフィーもいただけるようですが、オーガスタナショナルGCのクラブハウスの形をしているのでお酒は飲めなそうです。全米オープンも全英オープンも、全米プロもみんなお酒が飲める形状ですからね(笑)。
「自慢の後輩、頼むよ」と”坊ちゃん“にはハッパをかけておきました。みなさんも2022年の活躍を楽しみにしていてください。後輩自慢で始まった2022年ですが、引き続きゴルフにまつわる楽しいこと、気付いたことなどを皆さんにお伝えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
取材・文/小川淳子 写真/Getty Images