豊かな人生を送るためにとても大切なワークライフバランス。女性でも、男性でも、どんな仕事をしていても、必ず自ら道を探し,様々なことに優先順位をつけて選択していくことで、うまくバランスをとることが必要になります。
大人だけならまだしも、お子さんがいる場合のそれは、思い通りにいくことの方が少ないと言ってもいい難しいものになります。特に、職業柄”自分ファースト“でいなければならないプロゴルファー、特に母親となる女性の場合は、気持ちの持ち方、日々の過ごし方が本当に大きく変わらざるを得ません。男性の育休制度などもようやく広がりつつある日本社会ですが、出産だけは女性しかできません。それを経て、仕事であるゴルフに取り組むには、家族と一緒に子育てをするケースがほとんどです。
8月に岡山県で行われたLaLaクイーンズカップは、そんな女子プロの中でも中学生以下のお子さんを持つママゴルファーが集結する大会でした。優勝したのは佐藤靖子プロ。小学校3年生の女の子のママであり、今季はステップアップツアーを中心にプレーを続ける43歳です。
◆ママでありプロである、そんな仲間を探したら100人も!
出身地である神奈川県相模原市で、佐藤プロは夫と実母と一緒に子育てをしながら試合に出ています。実は、LaLaクイーンズカップ開催は、佐藤プロがきっかけだったと言ってもいいものでした。
岡山県の企業であるおもちゃ王国が所属先。これも、ステップアップツアーのプロアマで同社の高谷昌宏社長と一緒にプレーしたことが縁でした。「子供関連事業をしていて、子供が色々な体験をできることをずっと提供してきました。子供だけじゃなくママさん支援をしていこうというタイミングで、ステップアップツアーのプロアマで佐藤(靖子プロ)の話を聞いたんです」と、所属契約を結んだことから話が広がりました。
おもちゃ王国は、山陽新聞社と地元企業が集まったLaLaOkayama実行委員会のメンバーでもあり、この組織の10周年を記念して、今回のイベントが実現したのです。
女子プロゴルファー仲間でママになった人が、いったいどれくらいいるのかもわからないところから、佐藤プロは様々な形で仲間に声をかけたそうです。グループLINEを作って、口コミで声掛けをすると「100人ものグループになってびっくりしました」というところから始まったのです。「それでもまだわかっていない人がたくさんいると思います」(佐藤プロ)と笑うほどでした。全国にいる女子プロたちの私生活は、なかなか全貌がつかめていないのでしょう。
佐藤プロから、高谷社長や実行委員会を通して伝わったことで、どんな形なら、ママであるプロたちが出場しやすいかが考えられた大会になりました。新型コロナウイルス感染の第7波が広がるタイミングであったことから、当初計画していた託児所の設置は断念せざるを得ませんでした。けれども、付き添いの方と一緒にいられる広いキッズルームが解放され、現実問題としてお子さんを預ける相手がいない場合、特例としてスタッフが見ていてくれたケースもありました。
ママがプレーしている間は遊んでいた子供たちも、ホールアウトしたママには駆け寄る夏休みらしい光景もたくさん見られました。佐藤プロの元にもお子さんが抱きついていたのが印象的です。
◆子供を産んだらいいことがたくさんある!ロールモデルになりたい
佐藤プロは、長女が小学2年生になった昨年、ステップアップツアーのラシンク・ニンジニア/RKB レディースでプロ初優勝を果たしています。ママの仕事を理解し、応援してくれる娘さんと、一緒に子育てをしてくれる夫、お母さんの存在があってのもの。それに対しては当然大きな感謝をしていると言います。同時に、ママプロの活躍の場を広げることも考えているようです。
今季も、これまでステップアップツアー8試合に出場し、2勝目を狙っているのは言うまでもありません。もう一つ、考えていることがあります。「(LaLaクイーンズのような試合をすることで)子供を産んでからでも試合ができる、と思う人が増えればいいと思います。以前は、子供を産んだら引退しなくちゃいけない、みたいなところがありましたが、人間がいなきゃ。少子化なんだから、子供を産んだらいいこともあるんだよ、ということを多くの人に知って欲しいです」と、力強く口にしました。
前出の高谷社長も、今回のイベントが子育てへの理解を深める重要なメッセージとなり、支援が広がっていくことを望んでいました。今回、出場したままプロたちと、一緒にプレーしたジュニアゴルファーは、誰もが子育て支援へのメッセージの伝道師にもなったようです。岡山から日本各地へ広がる子育ての輪。夢は広がります。佐藤プロはプロゴルファーとして、一人の子供を持つ女性として、大きな役割を果たしています。
ステップアップツアーは今季後8戦。その中での活躍を応援するとともに、試合以外でのナイスプレーも続けていって欲しいものです。
取材・文/小川淳子