国内女子ツアー第8戦、フジサンケイレディスクラシックでツアー初優勝を飾った神谷そらプロ。88年のツアー制度施行以来、5番目の速さとなるJLPGA入会後113日目での勝利でした。ただ、実質最速タイと言ってもいいような大記録でもあります……。ではその理由とは?
今回もゴルフにまつわる「数字」をヒントにその魅力を解説していきます! これさえ読めば、もっとゴルフがしたくなる! 楽しくなるはずです♪
◆昨年プロテスト合格。笑顔が印象的な神谷プロ
フジサンケイレディスクラシックといえば、日本有数のリンクス川奈ホテルゴルフコース富士コースを舞台にするイメージが定着していますが、実は川奈に移ったのは2005年からなんです。それまではファイブハンドレッドクラブ、富士桜カントリー倶楽部、富士レイクサイドカントリー俱楽部で行われていました。今年で41回目を迎えた同大会ですが、ある記録を持っています。それは、昨年までツアー初優勝者を輩出した数が16人とツアー最多だったことです。今年優勝した神谷そらプロもツアー初優勝なので、その記録をさらに伸ばしたことになります。
さて、その神谷プロですが、どのような選手なのでしょうか。岐阜県土岐市出身の20歳で、昨年のプロテストに合格した新人選手です。笑顔がトレードマークであり、ボールを打った後にニコニコ顔になるのが印象に残るタイプです。ただ、その笑顔に騙されてはいけません。なんとドライビングディスタンスでは256・23ヤードで2位につけているのです。しかも、使用するドライバーのシャフトはフジクラのベンタスブラック5のX。パワーがないとしなりを得られない硬いシャフトなんですが、彼女はそんなシャフトを装着したドライバーにもかかわらず、しっかりと振り回して飛距離を稼いでいるわけです。
◆武器は堅いシャフトの3番ウッド。見事2オンに成功!
ただ、神谷プロが恐ろしいのはドライバーだけではありません。3番ウッドにもドライバーと同じシャフトを入れているのです。その3番ウッドが火を噴いたのが、最終日の4番パー5。ピンまで497ヤードありますが、ティグラウンドからグリーンまで結構な打ち上げホールなので、実質500ヤード以上あると考えていいでしょう。そんなホールで神谷プロがティショットで手にしたのが、この3番ウッドでした。気持ちよく振り抜いた打球は、フェアウェイ左サイドをとらえます。まだピンまで260ヤードありましたが、2打目でも3番ウッドを選択。心地よい打球音とともにボールはグリーンに向かって一直線に飛んで行きます。打球はグリーンに着地するとピンに向かって転がり、3メートル手前に止まりました。それを1パットで沈め、なんとイーグルを奪ったのです。
前の3番ホールでボギー、次の5番ホールでもボギーを叩いていただけに、4番ホールでのイーグルはとてつもなく大きかったと言えるでしょう。
◆JLPGA入会後113日での記録、実質プロデビュー最速タイ!?
その後、なかなかスコアが伸びず苦しみましたが、最終的に1打差で逃げ切ることに成功した神谷プロ。16歳で出場した日本ジュニアで2位タイに入るなど、アマチュア時代から注目され、同年にはナショナルチーム入りもしています。将来を嘱望されていましたが、21年に受けた初めてのプロテストでは合格ラインに5打届きませんでした。同学年の川﨑春花プロ、尾関彩美悠プロ、櫻井心那プロ、佐藤心結プロ、竹田麗央プロ、小林夢果プロが合格していただけにショックも大きく、1週間ほどクラブを握らなかったと言います。
ただ、翌年のプロテストではしっかりとトップ合格するあたり、かなりの負けず嫌いであり、根性があると判断していいでしょう。「同級生が優勝争いしている姿を見て、同じ舞台に立てていない悔しさもあり、どこか応援し切れていない自分がいました。でも、春ちゃんが優勝して、彩美悠ちゃんも優勝した姿を見て、自分もそこの位置にいけると思ったんです」と素直な気持ちを明かしたところも好感が持てますよね。
ライバルたちから1年遅れての優勝になりましたが、その結果、ある記録を打ち立てたんです。それはJLPGAに入会後113日後に優勝したことです。厳密に言うと、1988年のツアー制度施行後第5位の記録ですが、アン・ソンジュプロ、イ・ミニョンプロ、朴仁妃プロの上位3人はすでにツアープロとして海外で戦っていました。4位の佐伯三貴プロは112日でわずか1日違い。しかも、優勝したのは同じフジサンケイレディスクラシックなので、日程のズレによるものです。
したがって、神谷プロの今回のツアー初優勝は、実質JLPGA入会後最速タイと言ってもいいでしょう。それだけの偉業を達成したということを皆さんに理解してほしいのです。今後は、同期のライバルとともに、国内女子ツアーを大いに盛り上げて欲しいですね。
◆山西英希/プロフィール
スポーツライター。ゴルフを中心に幅広く取材、執筆。