国内女子ツアー第13戦「リゾートトラストレディス」では、山下美夢有プロが自身初の2週連続優勝を飾り、今季3勝目、ツアー通算9勝目を達成しました。その大会の3日目に、実は惜しい記録を逃した選手がいます。7連続バーディを奪った川﨑春花プロです。あとひとつバーディを奪えば、ツアー新記録でしたが、果たしてその舞台裏とは……。
今回もゴルフにまつわる「数字」をヒントにその魅力を解説していきます! これさえ読めば、もっとゴルフがしたくなる! 観戦が楽しくなるはずです♪
◆あと少しで記録…大会コースレコードを更新!川﨑プロ
開催コースのグランディ浜名湖GCは、その名のとおり浜名湖内にあるゴルフコースで、全体的にフラットなのが特徴です。ホールとホールを遮る林がしっかりとあるわけではないため、海からの風が吹きつけます。ただ、今回は風が強く吹くことはなかったので、それほどプレーに影響を与えたわけではありません。優勝した山下美夢有プロが21アンダーまでスコアを伸ばせた一因でもあります。
そんな状況下で迎えた大会3日目のことでした。インコースからスタートした川﨑春花プロの名前がグングンとスコアボードを駆け上がっていきます。前半のハーフスコアを3つ伸ばした後、なんと1番から7番までバーディを重ねていたからです。これまでのJLPGAツアー記録8連続バーディ。あと1つでタイ記録となるだけに、当然周囲の期待も高まります。
8番パー4は280ヤードと距離が短く、飛ばし屋ならばワンオンも可能なホールです。多くの選手はティショットを確実に刻みますが、川﨑プロもティショットを刻む作戦に出ました。ピンまで残り113ヤード地点からピッチングウェッジでボールを打つと、2段グリーンの下段にボールが止まります。ピンは上段に位置しているので約12メートルのバーディパットが残りました。それを決めればタイ記録でしたが、残念ながらボールはカップに届かず、連続記録は7でストップ。しかもパーパットも外してボギーにしてしまったのです。それでも10バーディ、1ボギーの63をマーク。前日に64をマークしてトーナメントコースレコードを更新した岩井明愛プロの記録をさらに更新しました。
◆腰痛だった川崎プロ。実は棄権すらも考えていた!?
ここで気になるのは、8連続バーディの記録保持者ですが、2人います。1人は11年のスタンレーレディス最終日に達成した諸見里しのぶプロ。1番から7番までバーディを並べた後、8番パー5ではイーグルを奪ったのです。9番パー4ではパーでしたが、ハーフ27をマーク。トータルスコアは64でした。
もう1人は19年の富士通レディース2日目に達成した成田美寿々プロです。やはり1番から7番までバーディを並べ、迎えた8番パー3でもバーディを奪い、8連続バーディを達成しました。厳密にいうと、諸見里プロは8連続バーディ以下のスコアであり、単純な連続バーディの記録でいえば、成田プロが保持者と言えるのではないでしょうか。
どちらにせよ、川﨑プロは1ホール及ばなかったわけですが、実は16、17番でもバーディを奪っており、もしも18番パー4でバーディを奪っていれば、10連続バーディになっていたのです。「えっ、そうなんですか? でも、18番は20歩ぐらいの距離が残っていたのでノーチャンスでした。あわやボギーみたいな(笑)」。と、何の後悔もない様子。というのも、この日の川﨑プロは前日から腰を痛めていたこともあり、棄権すら考えていたというのです。ただ、フィニッシュまでは普通にスイングできたので出場し続けたとのこと。「でも、つい振り過ぎてしまい、イテテテテテッとなってました」と振り返ります。なので、完走できただけでも十分だったのでしょう。現在、20歳の川崎プロ、体が万全な状態であれば、今後新記録も夢じゃないことでしょう。
取材・文/山西英希