国内女子ツアー第24戦「CAT Ladies」では蛭田みな美プロが西郷真央プロとのプレーオフの末、ツアー初優勝を飾りました。プロ8年目での悲願達成ですが、「このまま勝てないんじゃないかな」と思っていただけに、長く感じたことでしょう。ただ、今回蛭田プロはプロ179試合目、アマでの出場を合わせても199試合目での初優勝でしたが、国内女子ツアーでは過去、初優勝までに463試合も費やした選手がいるんです。
◆「初優勝までに要した試合数ランキング」で蛭田プロは16位
蛭田みな美プロは97年生まれの26歳ですが、アマチュア時代には日本ジュニア、日本女子アマのタイトルを獲得するなど、トップアマとして活躍していました。ナショナルチームにも入り、日本代表として海外の試合にも出場しています。言ってみれば、エリートゴルファーだったわけです。
ところが、プロ入り後は思うような結果を出せず、優勝どころかシード権さえ獲得することができませんでした。さらに2年前にはパッティングのイップス病にもかかり、まさに不調のどん底で喘いでいたのです。「このまま優勝できずにゴルフ人生が終わってしまうんじゃないか」とか、「箸にも棒にも掛からない存在だった」と言うのも本音でしょう。ただ、蛭田プロは自分のゴルフに対してあきらめることだけはしませんでした。
昨年12月にトレーナーと契約し、もう一度体を鍛え直すことを決意。瞬発力を中心に鍛えた結果、飛距離アップに成功します。パッティングのイップス病に関しても、小祝さくらプロのプレースタイルを参考に笑顔を取り入れた結果、緊張感が解けて手が動くようになったと言います。そのような地道な努力があったからこそ、元々あった素質がようやく開花したのでしょう。
振り返ってみれば、アマチュア時代からプロの試合には何度も出場していた蛭田プロ。それも合わせると、今回の初優勝は実に199試合目での達成でした。第一目標だったシード権も獲得。最終戦のJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップにも出場できます。まさに、苦労が報われた形となりましたが、過去の記録を見ると、蛭田プロよりも初優勝までに時間がかかった人がなんと15人もいました。
◆初優勝までの最長記録は463試合! 初優勝の最年長記録は?
ベスト3を発表すると、第3位が336試合の原田佳子プロ(91年週刊女性・JUNON女子オープン)。第2位が349試合の金愛淑プロ(中京テレビ・ブリヂストンレディス)。そして第1位が463試合の鬼澤信子プロです。鬼澤プロは90年にプロテストに合格すると、91年からツアーに参戦。そこから9年間シード権を獲得できなかったものの、00年についに賞金ランキング23位となり、初シードを獲得しました。ただ、そこからツアー初優勝までさらに10年かかります。途中、何度もシード落ちしますが、その度に不死鳥のごとく復活してきました。そして、今からちょうど13年前のニトリレディスで夢を叶えたのです。
最終日を2位に1打差の単独首位で迎えた鬼澤プロ。前半にスコアを4つ伸ばし、2位以下に大差をつけて後半を迎えます。ところが、プレッシャーからか12番でダブルボギー、13番でボギーを叩き、18番を終えたときには金ナリプロに追いつかれていました。なんとかプレーオフの末に優勝を手にしましたが、喜びと緊張感から解放され、大粒の涙が止まりませんでした。
40歳と346日での初優勝でしたが、【初優勝の最年長記録】とはならず、第3位に留まりました。ちなみに、国内女子ツアーの最年長優勝は、先ほど紹介した原田プロの44歳90日になります。近年はパワーゴルフが優位なだけに、当分はこの記録が破られることはないでしょう。
取材・文/山西英希